白檀の刑〈上〉 (中公文庫) の感想

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タイトル白檀の刑〈上〉 (中公文庫)
発売日2010-09-22
製作者莫 言
販売元中央公論新社
JANコード9784122053663
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 外国文学・著者別 » ハ行の著者

購入者の感想

 これはすごい。ベラボーな面白さだ。
 時は西太后が宮廷を支配する清朝末年の1900年。
 登場人物は,犬肉料理店の美人妻「眉娘」,眉娘の舅で44年間罪人の処刑を実践してきた主席処刑人「趙甲」,眉娘の夫(趙甲の息子)でちょっとお間抜けな「小甲」,県知事でありながら眉娘と親密な関係にある「銭丁」,眉娘の実父で猫腔(マオチャン)と呼ばれる芝居の師匠「孫丙」。
 物語は,頭部,腹部,尾部の3章仕立てで,第1章頭部では,眉娘,趙甲,小甲,銭丁のそれぞれの立場から一人称で物語りが始まる。第2章腹部は三人称となり,第三章尾部では,再び5人の登場人物の一人称で物語れる。
 それぞれが自らの過去を語り,物語は深化し,その人間模様や,生き生きとした登場人物に魅了される。
 ドイツ人の暴虐により妻子を殺され,やむにやまれず鉄道敷設現場を襲撃した父の処刑を免除してもらうために扮走する眉娘。彼女のつくる犬肉料理は天下一品。
私は当然,犬の肉など食べたことのないが,まるで目の前の皿にのせられて,そのうまそうな匂いが漂ってくるようだ。
 長時間罪人を苦しめることを目的に,少しずつ体の一部を削りとっていく凌遅の刑を実践する趙甲のプロフェッショナル精神の壮絶さ。
 孫丙の気持ちや町民のこころも十分に分かっているが上司(袁世凱)に逆らうことのできない中間管理職的立場である銭丁のつらさ
物語の面白さを十分に堪能できる傑作です。
 

清末の中国。山東省高密県。
西太后にも目をかけられた天才処刑人の趙甲。
都で数多の処刑を手がけた男が、故郷に戻り、自分の親戚の処刑を手がけることになる…。
伝統劇「猫腔」の口上まじりの、小気味良いリズムでつづられる、中国現代文学。

天才処刑人のお話ですので、さまざまな中国の処刑が描かれます。
頭を金具でしめあげる「閻魔の閂」、処刑人の胴を切る「腰斬」(上半身だけしばらく生きていたりするらしい)…。
身体を小刻みに斬っていく「凌遅の刑」はおなじみの(?)中国の処刑法ですが、天才処刑人の手にかかれば、その腕によって、五百刀ちょうどで罪人は絶命し、時に、処刑は一幕の芝居となる…。芸術的たらんとする処刑人の執念ときたら、絶句ものです。
そして、本書のクライマックスにあらわれる、「白檀の刑」…。
用意されるものは、極上の香油をしみこませた、白檀の木でできた、とがった杭……。
白檀の芳香の元、罪人は5日は死なない、という残酷な刑………。

文体が、芝居の口上のようで、その昔、公開処刑は、見世物であった…という雰囲気が、伝わって参ります。
処刑人の、残酷な美学と天才的な技術……。
ううむ…。なんだか、興味を持って読んでしまうのには、うしろめたさを感じるなあ…。
もっとも、残酷な処刑を描く作品である一方で、ホラ話のような軽さがあり、登場人物もどこか戯画的。ラストはとりわけ、けたたましく音の鳴り響くお芝居のよう。
文学作品よんだな…という印象です。

それにしても、内容に比べて、単行本の表紙の猫の絵、可愛すぎ…。

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