歴史認識を問い直す 靖国、慰安婦、領土問題 (角川oneテーマ21) の感想

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タイトル歴史認識を問い直す 靖国、慰安婦、領土問題 (角川oneテーマ21)
発売日販売日未定
製作者東郷 和彦
販売元角川書店
JANコード9784041104538
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

民主党政権が倒れて、安倍政権ができたころに書かれた本です。中国や韓国との関係が悪化して、大変だった時期に書かれた本なので、5年後の今、答え合わせをしている感覚で読んでみました。半分ぐらいの記述は杞憂に終わったという感じで、少し滑稽にも見えるのですが、筆者の予言が当たらなくてむしろ良かったと考えるべきかなと。

特に靖国問題に関して、A級戦犯を合祀することについての言及はとても参考になりました。
「A級戦犯にそそのかされて戦争に至ったので国民は無罪というストーリー」なのか、「日本という社会全体が戦争に突き進んだので、A級戦犯はスケープゴートで日本人総体として責任を取る」のか明確にしないままA級戦犯合祀するのは、中国や韓国からすれば納得いかないのはその通りだなと思いました。

自分は交易を通じて相手と強く結びつくことが相互理解を深め対立を解決していくという考えなので、日本国というのを前面に押し出した感じの論調が少し苦手なので、★3つ。とはいえ、国を背負って活動する外交官という立場の苦労は感じることはできました。

外務省出身の著者が現在の日本の抱える周辺諸国との間の外交問題について記しています。
それぞれの問題の経緯や性質を分析して分かりやすく書かれています。
しかし、北方領土問題における西村熊雄条約局長の南クリル諸島の線引きに関する国会答弁に触れていなかったり、韓国が反日で盛り上がる背景に日韓基本条約が韓国民に周知されていなかったことなどには触れておらず、網羅的な内容とは言えないようなところもあります。
また、東郷氏の提案する和解方法も理想的過ぎてあまり現実味が無い印象を受けました。
とは言え、退官後の自身の活動をも踏まえた上での見解もあって、結構興味深い内容になっています。

印象に残った部分は、日本特有の複雑さのある戦争責任問題について、村山談話に注目して鈴木大拙の「日本的霊性」に基づいた考え方で日本側の主張を纏めようとしている点です。
他には、日本が主張すべき価値観を農村などの自然の美しさに求めて、一方で田中角栄の「日本列島改造論」に代表される公共事業は全国に似たような都市を作る原因として批判しています。
これはTPPに突っ走る現状を見てもあまり説得力のある意見とは思えませんでしたが、ただ、こういう形で対比させる意見は見たことが無かったので興味深かったです。

その他、読んでいて一番驚いたのは、慰安婦問題に関してある国際シンポジウムに参加したアメリカ人のコメントの要約で、特に以下の部分です。

(引用開始)
4.これは非歴史的(ahistrical)な議論である。現在の価値観で過去を振りかえって議論しているのだ。もしもそういう制度を「昔は仕方がなかった」と言って肯定しようものなら、女性の権利の「否定者(denier)」となり、同盟の担い手として受け入れることなど問題外の国ということになる。(P165)
(引用終わり)

つまり、現在の価値観で過去を裁くというおかしな考え方を認め、何の躊躇いも無いのです。
こんな酷い考え方は日本人には到底受け入れられないし、これが当然というならこの問題が解決することは恐らく無いでしょう。

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