TPPと食料安保――韓米FTAから考える の感想

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タイトルTPPと食料安保――韓米FTAから考える
発売日販売日未定
製作者中村 靖彦
販売元岩波書店
JANコード9784000240437
カテゴリビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 各国経済事情 » 世界

購入者の感想

本書は、一見TPP肯定論と否定論の折衷主義、日和見主義的な構成となっており、論議の一貫性が全体として欠如し、不満足である。しかし、ここでは日本のTPP推進論の代表的な聖域論(五品目は586品目であり、全てを守るのでは交渉不可という論理)と、反対論(TPPは日本と米国のFTAに過ぎない不平等条約という論理)両者が折衷主義、日和見主義的な動揺の中で考察されるが、幾つかの貴重な論点と情報を提供する場となっている。本書が提供する最重要な論点は、元来TPPと日本の農業改革という課題は別々の問題であり、TPP推進論はこれら本来別々の問題、しかもTPPが後者の処方箋どころか甚だしい売国、亡国の不平等条約であるのに、両者を結合して詭弁を弄する点をそのプロパガンダの秘密にしている。農業問題の処方箋としてのTPPというのは虚偽である。それが、TPP推進論という詐欺の本質である。

評者は筆者が善意で、尚かつ利害関係から本書の日和見主義的な構成を試みているとあえて解釈し、TPPを全面的に考察する機会にする意義を肯定する。以下は、本書の幾つかの秀逸且つ政治的に意義のある貴重な論点である。

1)聖域五品目とは、日本の総輸入品目9018品目中の合計929品目を具体的に指す事。
2)日本の米の関税全廃を要求しているのは米国であり、米国はガットの初期にウェーバー品目として、自由化免除の品目が幾つかあり、それらは戦後1954年以来今も酪農製品、砂糖、落花生などの競争力のない品目を特権的に保護し、輸入制限を継続している。しかし、日本へはTPPで関税全廃を要求しており明らかに不平等であり、自己中帝国主義である。
3)CIAの傀儡政党である自民党の公約とJファイルの性格の違い。建前である公約では国益の為と称して尚かつ抽象的に言い逃れできるようにし、Jファイルでは具体的に規定しておくという不誠実さへの指摘。
4)日本にとって最大の国益はTPPではなく、食料の安定供給という正論。
5)TPPでは、米国政府交渉担当者は議会からまだ貿易促進権限を与えられていない。
6)食料自給率の計算は二通りあり、一人当たりの必要カロリー消費量と国産の供給関係、国産と輸入食料の総計のうちの国産の出荷額の割合である。

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