近代天皇像の形成 (岩波現代文庫) の感想

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タイトル近代天皇像の形成 (岩波現代文庫)
発売日販売日未定
製作者安丸 良夫
販売元岩波書店
JANコード9784006001865
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

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購入者の感想

本書は昭和から平成の改元を過ぎて平成四年に記されたものである。
新たな改元に際した今日でも、「天皇」は現実の政治権力や社会の汚い悪の部分から隔絶され、
清く尊い日本国民の模範を演じている。
18世紀末からの対外的危機と国内の秩序崩壊に際して、平田篤胤らの国学や国家のために「狂狷」を肯定する水戸学、
尊攘派の志士のつくりだした現実を度外視した聡明叡智英烈勇武な天皇像が、幕末にあったという。
明治維新に薩長と公卿の一部が幕藩の権力を掌握し文明開化への活力に天皇像を利用した。
これは知識人や権力者がつくりだした権威で、民衆には既存の民俗的な精神世界があって相容れないこともあった。
しかし軍隊や警察の力で民俗的な反抗は抑えられ、しだいに学校やさまざまな団体に所属して、
地主、教師など中間的指導者を通じ、民衆の日常生活では意識されなくても、無意識な規範に天皇像が刷り込まれていった。世間体や視線を意識する場面では、生活を度外視して天皇権威の信奉者になる他なかった。
というのが本書の大きな流れである。

筆者は歴史学者であり、濃密な歴史的展開の分析は読了に骨を折るが、民衆の宗教世界の豊かさ、幕末維新の思想の多様性に気づかされ、示唆に富むものが多く、熟読を勧める。
今日の我々も一見天皇と関係なく自由で多様な活動をしているが、天皇の権威や秩序が前提にあるという国民国家の宿命を逃れられないのである。「天皇」という宗教的儀礼的なシンボルなしに近代国家日本は簡潔明瞭な正当性を証明できないし、「天皇」に代わる強力な記号が現在も存在しない事実があるのだ。
軍国少年だった筆者は「屈辱の記念碑」と評しているが、戦争体験のない世代にとっても本書では触れられていないが昭和の初めメディアで政治批判に「陛下に対する侮辱」が武器として濫用され、世論が過熱し思考停止に陥った過去を忘れず、「天皇」というシンボルと付き合っていくのだろう。

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