撤退の農村計画―過疎地域からはじまる戦略的再編 の感想

180 人が閲覧しました
アマゾンで購入する

参照データ

タイトル撤退の農村計画―過疎地域からはじまる戦略的再編
発売日販売日未定
製作者林 直樹
販売元学芸出版社
JANコード9784761524890
カテゴリビジネス・経済 » 産業研究 » 農林水産 » 農家・農協経営

購入者の感想

 大野晃による「限界集落」という用語に代表されるように、生産年齢人口が極端に減り、存続が困難になった集落は少なくない。国土交通省の試算では、「いずれ消滅する」とされた集落は全国に2643カ所にのぼる。山村の過疎化に対しては、いかに山村を振興して人口減少を食い止め、高度経済成長以前のような活力のある状態に戻すか、という視点で対策が語られることが多い。

 しかし編者らはそうした従来型の議論に対して根本から疑問を投げかける。生産年齢人口がほぼ皆無の集落を昔の状態に戻すことは出来ないとの前提に立ち、「積極的な撤退」を訴えているのが本書の特徴だ。「積極的な撤退」の最大の特徴は、人口減少により集落が自然消滅する前に集落移転を行い、残された集落跡地は人手をかけずに管理することを提唱している点だ。

 今年の夏、いわゆる「限界集落」を訪れて住民の方にお話を伺ったことがあるのだが、とても良好な住環境とは思えなかった。都市並みの収入を得るはたらき口はほとんどなく、病院までは車で30分。おまけに買い物も週に1〜2回しか来ない行商頼みというのが実情。住民も高齢者がほとんどで、50歳半ばの人が「若手」と呼ばれて村の力仕事を任されているのには心底驚かされた。疲弊し切った集落の様子から、「のどかな山村」というのが、都市住民の身勝手な幻想に過ぎなかったことを痛感させられた。

 本書の執筆者も同じような考えを持っているのだろう。かたくなに集落を維持することは、そこに住む人にとって負担ばかりが大きく得るものが少ない。だからこそ「積極的な撤退」が主張されているのではないだろうか。

 「積極的な撤退」は山村集落の住民が鉄道駅のある地方都市に集落後と移転することを想定している。移転のメリットは、介護や通院の利便性が向上するだけではない。山村に住んでいては難しい息子・娘世帯と一緒に生活することのハードルは大きく下がる。また過疎集落ではお祭りや冠婚葬祭などの地域行事を催行することも難しいのが現状だが、地方都市に出てくれば、近隣の住民の協力を得てこうした行事を存続することも可能になるかもしれないという。「積極的な撤退」は決して集落の存続をあきらめるのではなく、むしろ集落存続のための方策なのだ。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

撤退の農村計画―過疎地域からはじまる戦略的再編 を買う

アマゾンで購入する
学芸出版社から発売された林 直樹の撤退の農村計画―過疎地域からはじまる戦略的再編(JAN:9784761524890)の感想と評価
2018 - copyright© アマゾン通販の感想と評価 all rights reserved.