ナチスの「手口」と緊急事態条項 (集英社新書) の感想

269 人が閲覧しました
アマゾンで購入する

参照データ

タイトルナチスの「手口」と緊急事態条項 (集英社新書)
発売日販売日未定
製作者長谷部 恭男
販売元集英社
JANコード9784087208962
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 日本の政治

購入者の感想

昨今、自民党が緊急事態条項を憲法に導入することを求めて激しい議論となっています。
本書は、そもそも緊急事態条項とは歴史的にはどのようなものなのかについて、主にナチ・ドイツの例を踏まえつつ憲法学者の長谷部恭男氏と歴史家の石田勇治氏が、対談形式で平易に解説している良書でした。

私見ですが、本書には2つの大きな狙いがあるように思われます。
第一の狙いは、各国の「緊急事態条項」の歴史的例を挙げて、その条項にあたえられた政治的制約を指摘することで、あまりにも杜撰な日本の緊急事態条項の危険性に警鐘を鳴らすというものでしょう。
第二の狙いは、ドイツ近現代史に関する基礎的で正確な知識の紹介でしょう。日本においてでさえ「ナチス」という歴史事象、あるいは「ヒトラー」という人物は、誰もが知るところですが、その実態については多くの誤解があるように思われます。8月29日の麻生太郎副首相の良識を欠いた発言のように、日本の指導的な政治家でさえもその本質についてはあまりにもお粗末な理解をし、問題を問題と思わず公的な場で発言してしまうことは実に嘆かわしいことです。

これらの狙いに対して、長谷部氏と石田氏という2人のベテラン研究者が、法学と歴史学という異なる視点からそれぞれの学問的知見を用いて取り組んでいます。
しかも、それを一般の読者でもとても分かりやすい形で説明しているのが本書の魅力です。

しかし、一般向けの解説書でありながら最新の研究成果も反映されています。すでにドイツ史に関心のある読者でもなるほどと思わせる部分もある点で、本書は出色の出来と言えます。
例えば、1933年2月の「ドイツ国会議事堂放火事件」に関して、長らく通説だったオランダ人共産主義者の単独犯行説が、最近の研究で否定されたことを石田氏は紹介しています(p.56-57)。日進月歩する最先端の歴史学的知見にも注意が行き届いていてとても刺激的でした。

最後に、こうした過去の事象を考えることが、現代の日本の状況を考えることに対してどのような意味を持つのかについてとても示唆に富むことを、本書の末尾に長谷部氏が書かれていました。

本書は
法学者(憲法学・公法学)の
長谷部恭男(はせべ・やすお)氏
(1956-)と
歴史学者(ドイツ近現代史)の
石田勇治(いしだ・ゆうじ)氏
(1957-)による
対談です。

本書の中心は
ワイマール憲法の第48条
【大統領による非常時の緊急措置権】
およびそれに基づく「大統領緊急令」と
自民党「日本国憲法改正草案」(2012.4.27決定)
における【緊急事態条項】の
比較・検討であり
類似性と危険性の指摘です。

私は政治や法学の専門家でもなければ
歴史の専門家でもありません。
精神科医フランクル(1905-1997)の
『夜と霧』(みすず書房)を読んで
ホロコーストに関心をもつようになり
ドイツ第三帝国に関する本を少しく読みました。

歴史上もっとも民主主義的と言われた
ワイマール憲法から
ヒトラーのような独裁者が生まれた
過程を知りたくて
本書を手に取りました。

さらに本書について
少なからぬレヴューが
早々にUpされていますが
プロ/コントラいずれにしても
「Amazonによる購入者」がいない
という稀有な現象を呈しています。
そこでAmazon Customerとして
レヴューを書くことにしました。

結論から申し上げると
1933年1月30日
首相となったヒトラーが
独裁体制を確立するまでの過程
(Machtergreifung)は
一見
「合法性の装いをとりつくろってはいる」けれど
よく見ると
「完全に合法とは言えない」
ということが
本書で詳しく語られています。

例えば
授権法(全権委任法)は
1933年3月23日
国会で成立しました。
これが成立するためには

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

ナチスの「手口」と緊急事態条項 (集英社新書) を買う

アマゾンで購入する
集英社から発売された長谷部 恭男のナチスの「手口」と緊急事態条項 (集英社新書)(JAN:9784087208962)の感想と評価
2018 - copyright© アマゾン通販の感想と評価 all rights reserved.