日本の夜の公共圏:スナック研究序説 の感想

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タイトル日本の夜の公共圏:スナック研究序説
発売日2017-08-02
販売元白水社
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カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

はっきり言って期待外れの本である。
「スナック」についての本邦初の学術的研究と銘打っているが、公共圏としてのスナックを体系的・学際的に研究するちゃんとした方針も計画もなく、編者が周辺の東大法学政治学研究科系の研究者に声をかけて、そうした人脈で研究組織らしいものを作り、サントリー財団から金をもらって行った、おざなりの研究としか思えない。その専門に多少近そうなところで、各研究者に報告を書かせ、単なる論文集を多少は体系的に見えるように章立てし、本にしている。要するに、どうせ報告書を出すことになっているから、多少は有名な出版社から出そう、幸い売れっ子の有名研究者を集めたから、出版してくれる出版社はある、チョコチョコと適当にまとめて出しちゃえ、ということで短期間で「アリバイ的に」出した本。
だから、本に体系性がない。公共圏としてのスナック研究に日本史研究者や社会学研究者は不可欠だと思うのだが、そうした研究者がいない。だから、類型論も歴史概論もない。喫茶店、スナック、赤ちょうちんの公共圏としての役割の違いなど、本質的な類型論的問題が触れられない。公共圏としてのスナック研究でもっとも重要なのは、学生運動の盛り上がりなどもあって、その草創期である60年代であるのは疑いないが、その時期のスナック論がまったく欠如している。だから、スナックの歴史概論もない。
60年代のスナックを論じないで、そもそもスナック研究序説と言えるのだろうか。風営法が改定される中で、65年頃を境に、多くのバーがスナックへと変わっていったが、それとは別に、軽食小型喫茶店として展開していったスナックもあったはず。その60年代の多様なあり方が、現在のスナックに複雑に影響している。しかも、60年代は、一方で高度成長が継続し、もう一方で学生運動が展開され、企業・大学とスナック(喫茶店、赤ちょうちん)との間に複雑な関係が形成された時期でもあったはず。60年代なら、まだ生き証人が多数生存していて、生成期のスナックについて証言を集めようと思えば、集められたはずだ。そうしたことをやった形跡が全然ない。そうしたマジメな研究の代わりに、無内容でページ数は埋まる座談会でお茶を濁している。これで何が研究序説だ⁈

「スナック研究会」――。言葉の響きはとっても
軽いですが、大学の先生達が集結して「夜の公共
圏」スナックについて研究する会です。サントリ
ー文化財団が助成金を出しているとのこと。

その研究会のメンバーがそれぞれの専門分野から
スナックについて真面目に調査・研究したのがこ
の本です。スナック本というと玉袋筋太郎氏(全
日本スナック連盟会長)、都築響一氏が知られて
いますが、本の帯によると「本邦初の学術的研究」
なんだそうです。研究会の代表が首都大学東京の
教授なので、同大学関係の先生の執筆が多いです。
もともとは単に飲み仲間だったのかもしれません。

各分野の専門家がそれぞれの立場からスナックに
ついて調査・研究をしているので章によって読み
ごたえがあるものと、あまりないものがあります。
個人的には第五章「カフェーからスナックへ」、
第七章「スナックと『社交』の空間」がスナック
の歴史を少しわかって面白かった。60年代後半の
スナックは若い人の集う場だったそう。今の客層
と全然違う。自分が若かった80年代になると、そ
れがディスコやカフェバーに変わった感じですね。

法律・条例関連に言及している章はスナックを経
営したい人にも役に立ちそうな内容。いろいろ規
制があるようですが、その実態はゆる~いのかど
うかはよくわかりません。

学術的研究においても「玉ちゃん」の著作や番組
が参考になっているのが興味深い。真面目な研究
本に「玉袋」って文字が何度も出てくるのが愉快。
玉袋氏も最近『スナックの歩き方』(17年3月。
イースト・プレス)というわかりやすい入門書を
上梓していますので、併読するとスナック通にな
れると思います。

あと、都築氏も座談会に登場しています。スナッ
ク概論としては楽しく読めました。ママさんやマ
スターが読むかどうかはわかりませんが。

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