チョコレートの世界史―近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石 (中公新書) の感想
239 人が閲覧しました
参照データ
タイトル | チョコレートの世界史―近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石 (中公新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 武田 尚子 |
販売元 | 中央公論新社 |
JANコード | 9784121020888 |
カテゴリ | » 本 » ジャンル別 |
購入者の感想
単に「スイーツの成立・歴史」として時系列で事実を追うのでなく、「労働力・富の分配・働くことの意義」という極めて現代的かつ斬新な視点から、「チョコレートを手がかりに、先進国家の社会システムの成立自体を読み解いてみせる」のが本書の魅力と思う。
学者先生の作品にありがちなまわりくどさや、大上段から講釈をするが如き圧迫感なく、かといって読者におもねる訳では全くない「文章の
レジスターの水準」にも好感がもてる。
王のために生み出され、大量生産を支える安価な労働力を「再生産」するため大量消費されるスイーツと化したチョコレートの数奇な運命。それとは対照的に、「内的な力の再生」により神とつながる宗教儀式における精神性とも深く関わる神秘性。たくさんの人達の汗と涙が刻まれているカカオからの精製過程と、極めて多面的な角度から、チョコレートを糸口に社会史を俯瞰する名著。
学者先生の作品にありがちなまわりくどさや、大上段から講釈をするが如き圧迫感なく、かといって読者におもねる訳では全くない「文章の
レジスターの水準」にも好感がもてる。
王のために生み出され、大量生産を支える安価な労働力を「再生産」するため大量消費されるスイーツと化したチョコレートの数奇な運命。それとは対照的に、「内的な力の再生」により神とつながる宗教儀式における精神性とも深く関わる神秘性。たくさんの人達の汗と涙が刻まれているカカオからの精製過程と、極めて多面的な角度から、チョコレートを糸口に社会史を俯瞰する名著。
中公新書のこの手の「○○の歴史」本は読み応えのある本が多い。
本書もユニークな視点から、チョコレートがどう世界史に関わって現代に至るかがわかる良書でした。
本書を読めば、チョコレートが古代マヤ、アステカの世界からヨーロッパにもたらされ、それがどうヨーロッパ社会に広まり、そして商品経済へと乗せられて世界中へと旅立ったかがよくわかります。
本書の特徴的なところは、産業革命後のイギリス、そしてアメリカでの「チョコレートを巡る労働事情」についてかなり多くの紙幅が占められているということ。
チョコレートが産業として成り立っていくにあたり、クエーカー教徒やロウントリー社といった会社がどういった役割を果たしたかを、労働問題の視点も絡めて解説していくという視点はなかなかユニークでした。
ただ、チョコレートの歴史を網羅的に知りたいという向きには、少々こういったことにばかり情報が偏っているのが不満かもしれません。
たとえば古代アメリカ世界でカカオというものがどんな役割を果たしたのか、イギリス以外の地でチョコレートがどんな発展をしていったのかという点などは、正直もっと知りたいところではあります。
そんな不満もありますが、十分読み応えのある一冊でした。
本書もユニークな視点から、チョコレートがどう世界史に関わって現代に至るかがわかる良書でした。
本書を読めば、チョコレートが古代マヤ、アステカの世界からヨーロッパにもたらされ、それがどうヨーロッパ社会に広まり、そして商品経済へと乗せられて世界中へと旅立ったかがよくわかります。
本書の特徴的なところは、産業革命後のイギリス、そしてアメリカでの「チョコレートを巡る労働事情」についてかなり多くの紙幅が占められているということ。
チョコレートが産業として成り立っていくにあたり、クエーカー教徒やロウントリー社といった会社がどういった役割を果たしたかを、労働問題の視点も絡めて解説していくという視点はなかなかユニークでした。
ただ、チョコレートの歴史を網羅的に知りたいという向きには、少々こういったことにばかり情報が偏っているのが不満かもしれません。
たとえば古代アメリカ世界でカカオというものがどんな役割を果たしたのか、イギリス以外の地でチョコレートがどんな発展をしていったのかという点などは、正直もっと知りたいところではあります。
そんな不満もありますが、十分読み応えのある一冊でした。