経済法 (LEGAL QUEST) の感想

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有斐閣の新シリーズです。
安めの価格設定、スタイリッシュな外観、よさげな「はしがき」等々、ついつい買おうかどうか迷ってしまいます。

・・・が、まず、初学者にはお薦めできません（この点はこのシリーズに共通するみたいですが）。
理由としては、まず、叙述の前半部分に「この点は（後の）第○章で詳述される」「この点は発展的な学習で…」云々があまりにも多い。この点は同じ有斐閣の「ベーシック経済法 第3版-- 独占禁止法入門 (有斐閣アルマ)」においてはよく工夫されている分、非常に残念な感じがします。具体例を挙げると、中核的な概念のひとつである「競争の実質的制限」（とその前提としての市場の確定）は第4章の「企業結合規制」で詳述されるわけですが、この概念を詳述しないまま「不当な取引制限」が第2章に説明されます。
そのため、冒頭から通読しようとしても、なんだかすっきりしない記述に非常にフラストレーションを感じます。章末には練習問題もありますが、例えば第１章の練習問題はまず第１章を読んだだけでは解答不能だと思います（学部生にとってはどういう試験問題がだされるかを予想する点では有用かもしれません）。
次に、判例・審決例の引用が非常に中途半端です。妙に新しい審決例が引用されている一方で有名で講義等では触れられるであろう先例が落ちていたりします。また、巻末の索引には百選番号が付されているのに本文中には百選番号が付されていません。細いですが、百選と併用する際にはいちいち年月日で確認しなければならず煩雑です。加えて、不公正な取引方法であげられている先例の説明が旧指定のまま説明されるのも（実質的に変わっていないとはいえ）初学者に易しいとは言えないでしょう。現行法に引き直して説明するべきではないでしょうか。さらに、クロスリファレンスも中途半端感は否めません。