チベット密教 心の修行 の感想

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上座部仏教を愛好している者です。
本書はチェカワ作「心の訓練-七つの要点」を下敷きに、チベット仏教の教学を解説したものです。
ある程度仏教の知識は必要ですが、専門的な内容を扱ったものというよりも
仏教のもっとも初歩の教えからていねいに解説してくれる本です。文章も難解なものではありません。
また、タイトルは「チベット密教　心の修行」ですが、密教的な部分はほとんど見当たりません。
ですから、チベット仏教をまったく知らなくても大丈夫だと思います。

個人的にはソナム師と藤田氏の著作は、ダライ・ラマ法王の著作よりも好きです。（もちろん法王は尊敬していますが）
師の著作は論理性が高いですし、無名の学僧ということで権威や名声にごまかされず、客観的に読むことができるからです。

大乗特有の「利他の強調しすぎ」は上座部よりの仏教徒としては気になるものの、
p.197「空の見解」の章は、人生の幸不幸を空によって説明している箇所などは、「なるほど！そういう手があったか」と思わず膝を打ちました。自在に空を語る大乗仏教にしかできないすばらしい説法だと思いました。
上座部の「無常・苦・無我」では言い足りない「かゆいところ」にも手が届く「空」ならではの説明です。

値段は張るものの、大乗仏教の実践入門書としては最適です。