ラヴ・レターズ の感想

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　アンディーとメリッサは小学生時代から60代に至るまでの50年間に数知れぬほどの手紙を交わします。これはその手紙で紡ぐ朗読劇のシナリオです。

　冒頭の幼い二人がやり取りする恋心は微苦笑をさそうものです。授業そっちのけで冗談に満ちた文面を綴り、それを先生に見つけられて反省文を書かされる様などは、なんともほほえましく思います。

　1937年生まれという記述が出てきますから、二人がたどるのは1950年代までの伝統的価値観が支配的な時代から1970年代の反エスタブリシュメント隆盛の時代までと重なります。
　進学や結婚。就職や入隊。夢や希望。野心と挫折。
　ここに描かれる人生の節目の出来事は、アメリカが激動の時代変革を体験している頃の物語であるとはいえ、時代を超越した普遍性をたたえて読者に迫ってきます。

　やがて年を経るにつれて二人の人生はじれったいほどのすれ違いを見せていきます。二人の間にあった恋心は幼なじみ同士の友情に姿を変えてしまったかのようでありながら、長年月を経て思わぬ形で性愛へと変貌を遂げる。その人生の機微を二人と共に心ざわつかせながら味わう物語です。

　遠く街を隔てて暮らす二人が、たまさか幾度か途切れることがあったとはいえ、50年にも渡って脈々と恋文を書き継いでいくのです。そのことに強い憧憬の念を抱かずにはいられません。
　それは、どこかで行き違ったままついえてしまった私自身のかつての思い人との関係を顧みるためのよすがともなったのです。

　読了後、あの人が暮らしている街の夢を見ました。