昭和天皇の戦後日本――〈憲法・安保体制〉にいたる道 の感想

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タイトル昭和天皇の戦後日本――〈憲法・安保体制〉にいたる道
発売日販売日未定
製作者豊下 楢彦
販売元岩波書店
JANコード9784000610551
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

著者は、昭和天皇や安保条約を中心とした多くの著者がある現代史家である。本書関連では、すでに『昭和天皇・マッカーサー会見』(岩波書店)などがある。本書は、2014年に完成・公開された『昭和天皇実録』を基本史料として丹念に読み込み、戦後史に果たした昭和天皇の役割を検証したものである。著者の既著における仮説が検証されるなど、確実な史料により「戦後レジーム」の正体と、現在にまで及ぶその影響の根源が実によく分かる。今後、いかなる戦後史の著者も本書を無視することはできないであろう。

戦後における昭和天皇の二大危機として著者は、「天皇制廃止と戦犯報道」および「共産主義の脅威」を挙げる。第一の危機「天皇制廃止と戦犯報道」ついて、昭和天皇の動きは迅速だった。側近を使ってマッカーサーの意向を把握した上で、GHQが戦後日本を統治するために天皇の存在が不可欠であることをマッカーサーに確認した。この過程が帳に包まれたマッカーサーとの会見記録から浮かび上がってくる。これと同時に、天皇を戦犯から免責し、東條首相以下に全責任を負わせることが確定的となった。また、憲法改正も日本案を急ぎ準備し、それに飽き足らないGHQが最終案を急遽作成する過程で、天皇の関与が明らかにされた。「象徴天皇制」は、天皇制を維持するための手段として、昭和天皇も歓迎したのである。

第二の危機「共産主義の脅威」への天皇の対応も戦後日本の体制に決定的な役割を果たした。共産主義の脅威への対応を名目に、講和後の日本に、米軍が「望むだけの軍隊を、望む場所に、望むだけ駐留させる権利」(講和問題交渉開始前のダレスの発言)ための仕組みとして日米安全保障条約が講和とセットで締結される。改めて驚くのは、米軍に日本を守ってもらう仕組みを昭和天皇が提案し、かつ沖縄を米軍に差し出す旨の発言まで行っているのである。この旧安保条約には、日本国内で起きた内乱や騒乱の鎮圧に米軍の出動を認める条項がある。つまり、共産主義の脅威に怯えた昭和天皇は、万一天皇制廃止を掲げた内乱が起きた際には、米軍に守ってもらうことまで想定していたのである。この天皇の意向は、米軍基地の約75%が国土のわずか0.6%の沖縄に集中し、また辺野古基地新設問題として、戦後70年の現在も沖縄の人々を苦しめている。

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