欧州統合、ギリシャに死す の感想

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タイトル欧州統合、ギリシャに死す
発売日販売日未定
製作者竹森 俊平
販売元講談社
JANコード9784062729086
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 国際政治情勢

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本書の著者・竹森教授は、本年4月に『逆流するグローバリズム』’(PHP新書)という著作を出版したが、同署はほぼ全てがすべてギリシャ危機とそれに基づいて発生したユーロに充てられていた。竹森教授はそれからわずか4か月後に、再び同じテーマの本書を執筆したことになる。
これは今年6~7月に、デフォルトが現実味を帯び、時々刻々状況が変化したというだけでなく、竹森教授がユーロ問題について深い関心を有しているせいではないだろうか。なお同教授には『ユーロ破綻、そしてドイツだけが残った』(日経プレミアシリーズ)という著作もある。

6月下旬にギリシャに対する第2次支援策が実行されるはずだったが、そのための条件の受け入れに関して、ギリシャ・チプラス政権が迷走するようになり、EU、ECB、IMFの「トロイカ」体制の中でも意見の相違があり、とりわけドイツが強硬な受け入れ条件を主張した。竹森氏はこの時期の動きについて、時系列で、自分の考えも述べながら、解説を加えていく。

ギリシャは19世紀以来デフォルトに陥っていた期間が長く、ヨーロッパ列強の監視体制のおかげで何とか財政立て直しをすることができるようになった国だった。そのような財政不安のある国がなぜユーロに加入することができたのはなぜか。それはギリシャがヨーロッパ文明発祥の地だったという政治的な要因が大きかったのである。ユーロ全体の規模からすればギリシャの経済規模はごく僅かであり、ギリシャの財政が危機に陥ったとしてもユーロ全体からみれば大した問題に波及しないだろうという楽観もあった。

さらに竹森氏は2001年のアルゼンチンのデフォルトを振り返る。アルゼンチンへの対応にもIMF内部などで異なる考え方があった。アルゼンチンの時の経験が、今日のギリシャへの対応についても異なる考え方につながっているという。

私が著者の竹森氏の著作を読むのは本書が始めてだが、本書は国際経済・金融論に詳しくない読者でも充分に把握できるように、経済・金融政策や原理などについてトピックで取り上げる都度、本文中で丁寧な解説があって、加えて一頃世界を騒がせたニュースの『ギリシャ』の金融・財政危機(ひいては“ユーロ危機”)につて、緻密で歯に衣着せない率直な論旨と筆致が読者を引き込む興味深い一冊に仕上がっている。タイトルには『欧州統合』即ちEU(厳密には“ユーロ圏”)の瓦解を暗示する印象を受けるが、趣旨は未だ完全に解決したとは言えない(金融・財政危機を内包する)『ギリシャ』という国家の本質ーーそれは19世紀の独立・建国以来、国家財政の債務依存体質と債務不履行の「常習」、「ソブリン・リスク」の常態化と財政再建の失敗が特徴ーーの金融・財政近現代史を概観しながら、今年6月から7月にかけての『ギリシャ』危機の経緯(ドタバタ劇)とユーロ圏、取り分けドイツとフランスの対応と変遷を詳細に分析し、著者なりの分析と建設的意見(要は債務免除のない追加支援は銀行債務の返済に充てられるだけで国民経済に寄与しないーー債務免除が支援の前提)を呈示しつつ右支援策の弥縫性、危機の存続、ドイツ・フランスの対立顕在化とユーロの将来性などを紐解くものと言える。構成・内容はこのページの「商品の説明」及び「目次を見る」に譲り、個人的に興味を惹いたトピックを紹介したい。

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