生命と記憶のパラドクス―福岡ハカセ、66の小さな発見 の感想

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参照データ

タイトル生命と記憶のパラドクス―福岡ハカセ、66の小さな発見
発売日販売日未定
製作者福岡 伸一
販売元文藝春秋
JANコード9784163756707
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » は行の著者

購入者の感想

66の掌編から構成される魅力溢れる科学エッセイ集。著者の「生物と無生物のあいだ」を読まれた方は御存知かと思うが、アメリカでのポスドク時代が余程辛かったと見え、本書もまずその回想シーンから始まる。全体的には軽妙な筆致なのだが、芯の部分では抒情性が漂うのは著者の特徴であろう。ただし、本書中である有名女性を以下の様に形容している通りの事が著者自身にも当てはまり、その記述は科学的には厳密である(意図的に曲解した遺伝子決定論等とは乖離している)。

  「彼女の文章は抒情に満ちあふれ、それでいて情緒に流されることがない」

(ドーキンス等より遥かに)気軽な科学エッセイとしても楽しめるが、「生命(観)と記憶」に関する深い洞察が込められている点が読者の興味を惹き付ける。著者の主旋律は「生命=動的平衡」及び「記憶=らせん階段」であるが、様々なエピソードによって「生命と記憶」の謎を旅して行く過程が面白い。特に、動的平衡の観点からの人間を他の生物と区別する事の無意味さ、ある人物の身元証明となる物は(DNAでも指紋でもなく)実はその人固有の「記憶」なのではないかという言辞が印象に残った。人間の自分勝手な思い込みをヤンワリと窘めてくれる辺り啓蒙書として相応しい。

また、昆虫少年だった事、子供の頃にSF小説(特に筒井康隆)に夢中になった事等は私と同じ(「ファーブル昆虫記」、「ドリトル先生航海記」及び筒井の諸作品は夢中になって読んだ)だったので、これも面白かったが、何と言ってもフェルメールに関する記述が秀逸である。著者の美的感覚の一端を見る思いがした。更に、若い読者にドンドン科学の世界に飛び込んで来て欲しいという思いが全編に漂っている辺りも意欲的である。手元に置き、折に触れて紐解きたい一冊である。

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文藝春秋から発売された福岡 伸一の生命と記憶のパラドクス―福岡ハカセ、66の小さな発見(JAN:9784163756707)の感想と評価
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