国土が日本人の謎を解く の感想

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タイトル国土が日本人の謎を解く
発売日販売日未定
製作者大石久和
販売元産経新聞出版
JANコード9784819112659
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

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 謎めいたタイトルと大胆な仮説、そして丁寧な検証。法隆寺の建造目的は聖徳
太子の怨霊鎮魂であり、『日本書紀』の実質的な著者が藤原不比等と論じる『隠
された十字架』(梅原猛・著)を彷彿させる。そして、本書『国土が日本人の謎
を解く』は、その期待を裏切らない。
 本書はそのタイトルの通り、ヨーロッパから見れば極東(Far East)に位置す
る島国「日本」の国土が、長い時間をかけて、世界にも誇るべき日本人のアイデ
ンティティを育んできた、その謎を解き明かしていくという大きな物語である。
 序章では、国土の自然条件とそこでの経験が、民族の個性を規定すると定義。
「積み重なる歴史」「変わらないことを大切にする文化」「紛争死史観」を持つ
「人為の国」ヨーロッパ(人)に対し、日本(人)は「流れる歴史」「変わるこ
とを尊ぶ文化」「災害死史観」を持つ「天為の国」であるとした上で、われわれ
は日本人であるということを今一度見つめ直し、「日本人をとりもどす」ことか
ら再出発しよう、と語り始める。
 第一章では、「地震」、「津波」、「火山活動」、「風水害」、そして「飢餓」
を加えたわが国の自然災害史が掘り下げられる。そして、こうした大規模な自然
災害が、われわれ日本人のものの考えた方や感覚に大きな影響を与えてきた、日
本の歴史を動かしてきたと解説する。「御成敗式目はなぜ1232年に制定されたの
か?」、「法然、親鸞、一遍、栄西、道元、日蓮など、鎌倉新仏教の巨星たちが
なぜこの時代に生まれたのか?」、「八代将軍徳川吉宗の子孫のみが、なぜ御三
卿という将軍家を継承できる特別の権利を認められたのか?」、「幕末・明治維
新の背景には何があったのか?」など、ここで取り扱われる歴史テーマはそれぞ
れ興味深い。
 第二章では、日本の国土の自然条件の特異性(日本の国土は他国とどう違うか)
が解き明かされる。「日本人」を育んだ国土とは、1複雑で長い海岸線と細長い
弓状列島、2四島に分かれた国土の主要部分、3脊梁山脈の縦断、4不安定な地質、

現代の溢れる情報の中では、正しい情報をつかむ力が重要である。
また、グローバル化やダイバーシティが求められる昨今、
日本人が世界で活躍するためには、まず、己が日本人である事を十分に理解することが重要である。

本書は『日本人』を語る切り口として『国土』を取り上げるとともに、著者の実体験や詳細な調査、
また、長年培った豊富な知識をバックボーンとして、日本人が世界に冠たる独自の文化を築いてきた、
その歴史と理由を解き明かしていく。
読んでいると地理を学んでいるようであり、日本史を学んでいるようであり、
世界史を学んでいるようであり、哲学を学んでいるようであり、様々な情報に惹き付けられる。
(おそらく、これが『国土学』の奥深さなのだろう。)

本書は、『日本人』であることに対する、根拠の無いプライドを持つことを薦めることは決してない。
世界各国における歴史的事実との比較を交えながら、
その裏に隠された事象に対する大胆な仮説とその検証を行い、
その全ては『日本人論』に一つ一つ丁寧に紐付けられていく。
時には著者自身も含めた日本人への戒めも添えながらも、
先人の偉業には礼賛を、そして現代に生きる我々には厳しくも温かい激励を与えてくれる。
自分が日本人であることの喜びを教えてくれると共に、責任も植え付けられた思いだ。

最後に、本書は、決して『国土』に携わる社会人向けに書かれたものでは無い。
溢れる情報の中で確固たる日本人像を描けない若者や、
偏った情報とすり込まれた知識で虚像の日本人像に縛られた大人、
これから日本人として世界に飛び出していくであろう学生、
そう、全ての『日本人』に向けて書かれた図書なのであり、多くの方に是非手にとって読んでもらい。

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