男の絆 明治の学生からボーイズ・ラブまで (双書Zero) の感想
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参照データ
タイトル | 男の絆 明治の学生からボーイズ・ラブまで (双書Zero) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 前川 直哉 |
販売元 | 筑摩書房 |
JANコード | 9784480864116 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論 |
購入者の感想
近現代の日本における「男同士の絆」の変容について、実証的かつ実践的に考察した本。明治前半期、エリート学生のあいだでは「成長」を目的とした男色文化が流行していた。だが世紀転換期には男色はタブー視され男たちの「友情」のなかから恋と性は排除されるようになり、大正期には「同性愛」の「異常」が語られるようになった。その背後には、恋愛と性と結婚を一致させるロマンティックラブ・イデオロギーの力学が作用しており、異性愛から逸脱した感情や行為は抑圧されるようになった。現代でもなお同性愛者は「からかい」の対象であり、男の絆から排除された女性たちの一部が男と男の性愛を「ボーイズ・ラブ」として想像的に消費するが、彼女らは「腐女子」としてしばしば自虐せざるをえない。
こうしたジェンダー史的な事情が、それ自体でなかなかに興味深い資料によって論じられており、とても面白い本だが、加えて、男性もイケると公言する著者本人が日頃感じてあるのであろう、被差別感情の原因としてある社会意識に対して批判的な言論が随所で展開されており、こちらも重要である。性別に関係なく誰が誰を愛しセックスしようが問題にしない社会を希求する著者の主張は、語り口はやわらかいが、実に力強く迫ってくる。
こうしたジェンダー史的な事情が、それ自体でなかなかに興味深い資料によって論じられており、とても面白い本だが、加えて、男性もイケると公言する著者本人が日頃感じてあるのであろう、被差別感情の原因としてある社会意識に対して批判的な言論が随所で展開されており、こちらも重要である。性別に関係なく誰が誰を愛しセックスしようが問題にしない社会を希求する著者の主張は、語り口はやわらかいが、実に力強く迫ってくる。