土門拳 古寺を訪ねて―京・洛北から宇治へ (小学館文庫) の感想

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参照データ

タイトル土門拳 古寺を訪ねて―京・洛北から宇治へ (小学館文庫)
発売日販売日未定
製作者土門 拳
販売元小学館
JANコード9784094114232
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » エッセー・随筆

購入者の感想

土門拳が撮った京都の古寺の佇まいからは、凛とした空気感が感じられます。約半世紀前の光景ですが、今と変わらないのは京都の凄さでしょうし、他のカメラマンが取り上げていなかった戦前から奈良や京都の古寺を撮り続けてきたのは写真芸術のすそ野を広げた功績につながります。

約80枚の写真(モノクロが大半)と、残りは彼の仏様やお寺への思いの随筆が掲載してあります。写真を撮っている時のエピソードや、ちょっとしたこぼれ話も掲載してありますので、厳しい表情の土門拳のイメージとは少し違う人間味が感じられました。藤本四八氏の「若き日の土門拳」の文から日本工房に入社し名取洋之助に鍛えられた厳しい修業時代を知りました。名取氏に叱られ、撮った写真を屑かごに入れられて暗室の中で「くやしくておいおい泣いたものだ」という体験が土門拳を創り上げたのは間違いありません。

クローズアップで取る手法は当時としてはとても斬新だったでしょうし、現在でも全く違う角度の仏様の表情を知ることになります。広隆寺の弥勒菩薩半跏像の頬に残る木目の痕は遠くから見たのとは全く違うイメージをもたらします。同様に背中の部分も見ることの少ない角度で彼の撮りたかった思いが今も明確に伝わってきます。

嵯峨野のあだし野念仏寺が当時知られていなかったエピソードには隔世の感がします。やっとの思いで撮った平等院鳳凰堂夕焼けの写真は今も圧倒的な美しさで迫ってきます。

内容は、神護寺と高山寺(小川義章師のこと)、西芳寺と洛北・洛西(西芳寺と夢窓疎石)、東寺と三十三間堂(観智院の和釘)、平等院(平等院について)、若き日の土門拳(藤本四八)、です。

神護寺の「薬師如来立像」を、土門はこう語っている。
「飛び立とうとして飛び立たず、叫ぼうとして叫ばず、動と静の矛盾する要素を一身にもって、
高雄山中奥深き黒漆の厨子の中に、薬師如来は直立している」
土門拳の撮る仏像には、「気」がある。
それは、御仏を、作り、縋り、敬まった、古人たちの信仰の光芒でもあり、
実際に仏像と向かいあった事のある人ならば誰でもが感じた事のある、あの御堂を満たしている空気感だ。
この「京・洛北から宇治へ」では、北は高雄、鞍馬、南は宇治まで、京都の名だたる仏像・寺院を恐縮し収録している。
有名どころでは、国宝第一号の広隆寺の「弥勒菩薩半跏像」や同寺「不空羂索観音菩薩像」、三十三間堂の「千体千手観音立像」、
平等院の「阿弥陀如来座像」並びに「雲中供養菩薩群像」、東寺の「五重塔」「梵天座像」などで、
私たちが一度は目にした事のあるものが、土門独自のクローズアップという表現で、新たな一面を見せてくれる。
否応無く古都に思いを馳せたくなるこの一冊に、私もまた、本を手に取って程なく、京都に走った。
この小さな文庫本は、古寺巡礼をする人々にとっては、ガイドブックとは異なる一つの手引きと成り得るだろう。
また、仏教美術や建築に傾倒する者には、新たな「視点」の発見になるのでは、と思われる。
同シリーズの他3冊も是非、手に取って頂きたい。

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