インドの衝撃 (文春文庫) の感想

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タイトルインドの衝撃 (文春文庫)
発売日販売日未定
製作者NHKスペシャル取材班
販売元文藝春秋
JANコード9784167773175
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複数のNHKの記者により、主に経済的視点からインドについて書かれた本。執筆者の中には数年の駐在経験のある人もいますが、ほとんどの人は特にインドに精通しているというわけではなく、理解が表面的だと感じました。普通の日本人が普通に感じる視点で書かれたという意味では読みやすいかもしれませんが、それが本当のインドの姿を映しているかは疑問です。NHKという日本の知性を代表する立場上、インドの歴史や精神性などを理解した上で、もう少し掘り下げた取材にできなかったのかと感じました。例を出すと、「インド人はよく首を横に振る」というくだりがあり、この仕草を誤解した日本人が損をしたエピソードが出てきますが、これはかつて欧米人から見て日本人女性が口の前に手を当てて笑う仕草を小馬鹿にしているように映ったことと同レベルの話ではないでしょうか。インド人との付き合いが長いイギリスや欧米ではインド人の首を斜めに振る仕草はよく知られており、小説などにも出てきます。インドに赴任しようとする人ならそのくらいは勉強しておいた方がよいのではないでしょうか。また、「インド人は本当に頭がよいのか」という問題提起もちょっと失礼ではないでしょうか?それにインド人の中にだって頭のよい人もいるし、そうでない人もいるのは日本や他の場合と同じでしょう。なんだかピントが狂っている感じです。それに相手がインドだから何を言ってもいいという態度が見えます。人は基本的に自分に都合のよいことしか書きません。誤解を恐れずに言うならば、インドが日本の男性に不評な一番の原因は、一部の東南アジアの国々にあるような「遊ぶところ」がないからだと思います。厳密に言えば、少ないからだと思います。もし、インドが男性特有のストレスを気楽に発散できる国であったら、そこまでぼろくそには言わないでしょうね。この本に限らず、インドを小馬鹿にしたような態度はインドに対してもインドと真面目につきあっている日本人に対しても失礼です。

インドの首都デリーに在住する者ですが、本書は農村の貧困の記述を除いてはインドが外国に見せたいような「皆立志伝中を目指して頑張っており、生活も日々よくなっている。将来ばら色」といった社会のごく一部分の記述に偏っており、あまりに一面的と思われます。おそらくインド=貧困と混沌という旧来の印象を覆すためにそうした部分を取り上げたのでしょうが、少なくとも、この本の印象でインドに来てみると本の記述と現実とのギャップに落胆すること請け合いです。実際に住んでみて感じたインドは、都市におけるインフラ不足、スラム、また政治の混乱、官僚の腐敗といった多くの問題を抱えています。例えば、IT大国と言いますが、確かにIT技術者はいますがITインフラはまったく整っていません。
以上のように、この本はインドの経済成長の可能性と問題点を包括的に捕らえているとは言いがたく、 インドブームがある程度一般に膾炙して一段落した今となっては、役割を終えたとも言えるのではないでしょうか。インドの実態を正確に把握するためには、インドの抱えるさまざまな負の面にも切り込んだ『インド 厄介な経済大国』の方がはるかに有用です。

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