物語 近現代ギリシャの歴史 - 独立戦争からユーロ危機まで (中公新書) の感想

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参照データ

タイトル物語 近現代ギリシャの歴史 - 独立戦争からユーロ危機まで (中公新書)
発売日販売日未定
製作者村田 奈々子
販売元中央公論新社
JANコード9784121021526
カテゴリ歴史・地理 » 世界史 » ヨーロッパ史 » ヨーロッパ史一般

購入者の感想

 わずか280ページほどの新書版だが、読む者を歴史を学ぶ面白さに惹き込んで最後まで飽きさせず、しかもこれだけ多くのことを考えさせられる書物に出会えることは滅多にない。著者はアラフォーの少壮女性歴史学者で、本書が最初の”単著”であるとのことだが、素人の小生にも本書が並々ならぬ勉強の成果を基にして執筆に取り掛かったものであることが分かるし、歴史、文化、政治、文芸に関する著者自身の見解が随所に顔を出すが、そのバランスの取れた鋭さにも感心した。

 大多数の(小生を含めての)日本人にとって「ギリシャ」のイメージは、古代ギリシャ文明とエーゲ海ツアーにアクロポリス観光、そして最近のユーロ危機をめぐる騒ぎといったところでしかない。それに対して著者は冒頭で、「本書を読み終えたとき、読者のみなさんの心の中には、これまでとは違う、ギリシャとギリシャ人に対する少し複雑なイメージが作られているはずである」と述べることから書き始める。この書き出しを目にしたとき「何という自信だろう!」と思ったが、読み終わったいま、まさに著者のいう通りであったことを認めないわけにはいかない。

 民主主義とは国家の統治形態の一つであり、その淵源が古代ギリシャにあることは誰でも知っているが、19世紀になって人為的に作られるまで、史上「ギリシャ」という国家は存在したことがなかった。しかもその人為的に作られたギリシャの国家理念は、神々の活躍した古代ギリシャ文明との絆もさることながら、一神教のキリスト教文明の華であったビサンツ帝国への回帰理念であったという。
 しかも、ギリシャ人とは誰のことか、はたまたどういう言語を正当のギリシャ語とすべきあるか、ということさえ全国民的共通認識は確立されていなかったため、それを定めるために多くの流血を伴う抗争を繰り返さなくてはならなかったのが近現代のギリシャであった、と、ここまでのことを知っただけで、日本人と日本国そして日本語について、「それが何であるか?」の議論をすることさえ思いつかないほど自明である我々日本人にとっては、「ああ、日本に生まれた日本人でよかったな」とつい思ってしまう。

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