フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人 (朝日新書) の感想

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タイトルフード左翼とフード右翼 食で分断される日本人 (朝日新書)
発売日2013-12-13
製作者速水健朗
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022735393
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

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購入者の感想

「安全・健康志向=フード左翼」「安さ・ジャンク志向=フード右翼」と、人の食の嗜好を二種類に分け、その特徴から政治・社会思想の分析を試みる斬新な発想に期待しました。
が、「取材が多いけど浅い」「本論と結論に矛盾がある」など違和感を覚える点が満載。
私はフード右翼もフード左翼も体験した底辺の農村民ですが、内側から見て、啓発される情報よりも「的外れ」な内容が多かったです。

この本で、フード左翼は「富裕層」と定義づけられています。が、単に、底辺への取材を怠っているだけでは?
著者は、菜食主義者の祭典・ベジフェス取材にあたり、フード左翼像として「化粧気のない乾いた感じの女性たち」「長髪で麻でできた服を着ているような男たち」「ピースフルで左翼的でシャレの通用しないイイ子ちゃんの雰囲気」な人々を思い描いていました。
実際ベジフェスを取材してみたら、そんな客ばかりではなかったけれども「思い描いていたとおりの人もたいして苦労せず見つけることはできる」としています。
にもかかわらず、苦労せず見つかるほど数が存在する、いかにも裕福そうではない、フード左翼の一派を担っている彼らの年収や生活には触れられていません。
果たして、決して少数派ではない彼らは富裕層なのでしょうか? そうした人々は、私を含め、少ない収入から工夫してやりくりしているケースも多いのでは?
富裕層ではない主婦相手に「安全な食」宅配を地方で細々と営む草の根業者、小規模店舗やネット宅配も目を向けて頂きたいです。販売するのは大手だけではありません。庶民も下層で努力しています。
きちんと作られた作物は少量でも満足感が得られ食べる量が少なく済むため、ドカ食いする必要がなくなり、結果的に購入量・金額を減らせる面も個人的には大切だと思います。

「有機農業のマイナス面」も切り口は素晴らしいし、きちんと考えて行くべき課題です。
ただ、有機農は農法のひとつに過ぎませんし、さらに自然で環境持続可能な農法を提唱する農業塾も国内に存在します。有機堆肥に対する分析も大雑把で浅すぎです。

「フード左翼/右翼」というコピーは秀逸。ただ実際には、左翼・右翼というほど大げさな話ではなく、単に「リベラル/保守の傾向が食べ物の嗜好に表れる」程度の意味かと思う。基本的には「フード左翼」側の話に終始しており、『ラーメンと愛国』の著者だけに、元々はジャンクでB級な食べ物を好んでいたそうだが、取材の過程でオーガニックフードや玄米食等に関心を持つようになったらしい。

スローフード運動やカリフォルニアのシェ・パニーズなど、個々の事例は食に関心の高い人にはさほど目新しい話題ではないが、著者が元々そうした食の嗜好の持ち主でないだけに、一定の客観性が保たれている点に価値があるかと思う。

本書でもその経緯が触れられているように、そもそもこうした自然食志向はヒッピー・ムーブメントやそれ以降のニューエイジなどと関係が深いので、しばしば一種の「信仰」になってしまいがちだ。
食の安全や健康は確かに普遍的な問題ではあるが、有機農法にせよ地産地消にせよ、そうした問題を解決してくれる魔法の処方箋ではあるまい。むろん一部の企業によって世界の食料生産が独占管理される状況に対抗していく試みは必要だろうが、そうした取り組みにも負の側面があることは認識しておくべきではないかと思う。

本書では、有機農法が環境負荷が高いことや、遺伝子組み換え作物の可能性など、ナチュラルフード志向の人がタブー視しがちな問題にも目配りが効いている。また、こうした運動の支持者が「富裕層の都市住民」であることを喝破している点も評価できると思う。
私見だが、環境保護などの運動がしばしば広範な支持を得られないのは、言わば「金持ちの道楽」の範疇を出ないためではないかと感じる。
それだけに、日本の社会が食によって分断されているという本書の主張には、正直暗い気持ちにならざるを得ないのだけれど。

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