日本史の森をゆく - 史料が語るとっておきの42話 (中公新書) の感想

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タイトル日本史の森をゆく - 史料が語るとっておきの42話 (中公新書)
発売日販売日未定
製作者東京大学史料編纂所
販売元中央公論新社
JANコード9784121022998
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

 東大の史料編纂所に勤める42人が、それぞれの専門領域から「選りすぐり」の逸話を
集めて綴った42編のアンソロジー。「選りすぐり」といっても、波乱万丈とか軽妙洒脱
とか抱腹絶倒とかはまったくなくて、予想通りのジミな内容である。ジミというのは、
地味ではあるが、また同時に噛めば噛むほど味の出る滋味に溢れた逸話だったという
肯定的な評価である。 

 例えば「中世の赤米栽培と杜甫の漢詩」の逸話。

室町時代の禅僧、江西龍派が杜甫の漢詩について講義した時の出席者による講義ノート
「杜詩続翠抄」によれば、杜甫の詩のなかに「赤米」が出てきたときに、講師は
赤米とはいかなるものかの説明とともに「日本でも九州でとくに多く作っている米で
ある」と雑談している。このことから、当時の赤米栽培分布状況を知ることができるし、
講師がわざわざ赤米の日本での栽培に触れたのは出席者に赤米を取り扱う官僚や禅僧が
いたからだと推察している。当時の知識人たちは杜甫の漢詩を勉強して遠くの中国に
あこがれの眼を向けつつも、自分たちの携わる農業生産や税務の現場にもしっかり思いを
馳せていたのである。

 42編の逸話は
        (1)文書を読むこと  10編
        (2)海外との関連    8編
        (3)皇室関連      7編
        (4)武士関連      9編
        (5)一般民衆関連    8編

に類別されており、各編が正確にぴったり5頁であるのも、いかにも史料編纂所らしい。

 読めば極めて手堅いかつ硬い印象を受けるが、史料編纂所の仕事というものは
(戦前のように政治が日本史や史料編纂に関与することを避けるためにも)何十年もの時間を
かけて丁寧にゆっくりとやっていくものだからこれでいいのである。
当書のジミさを見てあらためて史料編纂所の仕事ぶりに敬意を抱いた。

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