知性について 他四篇 (岩波文庫) の感想

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タイトル知性について 他四篇 (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者ショーペンハウエル
販売元岩波書店
JANコード9784003363232
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

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 ショーペンハウアー哲学の最大の魅力は、何といってもそのわかりやすさであろう。それが仇となってアカデミズムの世界では軽視されがちだが、わかりやすさと深さとは決して矛盾しない。概念ではなく直観を重視したその哲学にふさわしく、彼の叙述は具体的でありカントやヘーゲルなどの難解さとは一線を画している。
 本書はそんなショーペンハウアーの魅力を最大限に伝えるアフォリズム集『パルエルガ・ウント・パラリポメナ』の中から、主に認識論に関する雑文を抜粋した哲学エッセイ集である。岩波文庫からは同趣向の本が計三冊出ているが、それらの中では本書が最も哲学的であるとは言える。
 ショーペンハウアーは比喩が上手く、ときに詩的ともいえる表現を使うことさえある。例えば時間と空間が客観的実在ではなく主観的形式に過ぎないというカントの観念論を表現するのに「世界の事物は時間という縦糸と空間という横糸が織り成す織物の上に盛られる」というような言い回しを使ったりする。あるいは同じく空間の主観性を証明するのに「われわれは空間を空っぽにすることはできるが空間そのものを取り払って考えることはできない」という巧みな論理を持ち出したりする。フランス的ともいえるこの明快さは、ショーペンハウアーが幼い頃商人になるために単身渡仏させられ、帰ってきたときにはドイツ語を忘れていたくらいフランス人化していたことと関係があるのかも知れない。
 著作家の傑作は晩年が多い、とショーペンハウアー自身が言っているが、若くして書き上げた大著『意志と表象としての世界』よりも、晩年にコツコツと書き継がれた『パルエルガ・ウント・パラリポメナ』の方がはるかに読みやすいことは確かである。ショーペンハウアー哲学のエッセンスが凝縮された本書は、岩波文庫からの他の二冊および新潮文庫の『幸福について』と並んで、恰好のショーペンハウアー入門書と言えよう。

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