Buffalo Springfield の感想

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ニール・ヤングがボーカリストでなく、リード・ギタリストとしてクレジットされている珍しいアルバム。彼は芸能界デビューしたくて、ウィニペグから上京（ではなく上カリフォルニア）しスティルスに合流したいきさつがあります。ここでの主役はスティルスで、彼がほとんどの曲を書き、アレンジとメイン・ボーカルを担当しています。リッチー・フューレイのリードもスティルスが割り振ったものでしょう。アートロックと言う言葉はまだなく、フォークにブリティッシュ・ビートをブレンドした内容です。聴いて感じることは、曲想の新しさより詩情を大事にしていること。バーズと同じような成り立ちのグループですが、これが何より違います。

わたしはスティルスの声を個性的だと思っています。西海岸特有のコーラスの中でも彼の声は容易に聞き分けることができます。そしてスティルスの声は甘くならない。ビートルズのオリジンはエバリー・ブラザーズだという話がありますけれど、エバリー・ブラザースを正統に受け継いでいるのはスティルスのほうかも知れません。8.Burned はたどたどしくニール・ヤングが歌うのが新鮮です。もう1曲ヤングの良さが出ているのが11.Out Of My Mind で、アルバム唯一のヘビーロックです。スティルスとヤングの不思議な関係は、ここから始まったのでした。

６６年発表の１ｓｔ。比較的短期間の活動ながらバーズと並んで７０年代アメリカン・ロックの源流の一つとしてとらえられている重要なグループがバッファロー・スプリングフィールド。結成メンバーはスティーヴン・スティルス、ニール・ヤング、ブルース・パーマー、リッチー・フューレイ、デューイ・マーティンの５人だったが、実力者の多いグループなだけに結成してしばらくしたころからメンバー自身がグループにあまり興味を示さなくなったためグループは約２年で解散。メンバーはソロ活動を中心にしてCSNやポコなどに散って行った。
本作は楽曲の半数以上をスティルスが手掛けており、そこにヤングの曲が挟まれるといった内容。素朴だが芯のしっかりとしたスティルスの楽曲はどれも粒ぞろいであり、フォーク・ロック、カントリー、サイケ、ビート・ポップなどをうまく消化した素晴しい出来のものばかりである。彼らの作品はまとまりという点で評価の厳しくなる作品が多いが、本作だけは別格。すなわちスティルスがきちんとリーダー・シップをとったことが本作の完成度を高めているのだろう。６〜７．はモンキーズあたりに通じる仕上がりである。

バッファロー・スプリングフィールドの名前を初めて聞いたのは細野晴
臣が出演したラジオ番組で。サイケ調でいながらどこかもったりした感
じの楽曲が妙に印象的だった。
それからしばらくして三枚のオリジナル・アルバムを同時に買ったが、
なんだかんだいって一番の愛聴盤となったのはこれ。
はっきり言って少々とっちらかった内容。名盤と言うにはちょっと役不
足。でも少々地味ではあるけれど基本的に捨て曲が無いし、演奏もとて
も良い。一回聴いただけでは、なかなかその良さは理解できないけれ
ど、どこかひっかかるものはあるはず。そのひっかかるものが何かを探
求するために幾度と無く聴き直すことになります。
このアルバムだけでなく彼らが残したオリジナル・アルバム全部に言え
ることだが、聞き直すたびに何か新しい発見があるのがすごいところ。
少ない音数でどれだけ聴かすかという見本のような演奏だと思う。
とぎすまされたセンスでバンド・アンサンブルの妙を昇華させたという
意味ではビートルズと双璧をなすと勝手に信じているのだが、どうか？
バンド経験ゼロの僕がこんなことを言うのもなんだが、現在バンドをや
っている人に是非聴いてもらいたい。音作りのセンスで聴衆の心をつか
むにはどうすればいいかというヒントがこのアルバムの随所に隠されて
いると思うから。
またリアル・タイムではあまり評価されず、解散後に再評価されるよう
になったこと、細野晴臣がいたはっぴいえんどへの影響、ミュージシャ
ンズ・ミュージシャン的傾向が強いこと、その魅力の不可思議さなどリ
トル・フィートとの共通点が見え隠れするのも興味深い。