京都名所百景 (SUIKO BOOKS 162) の感想

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京都をテーマにした写真集の出版数では一番多いと思われる水野克比古さんによる『京都名所百景』は、まさしくベストシーズンのベストショットの連続でした。京都を写したハンディな写真集としては決定版と言っても過言ではないでしょう。

社寺仏閣の風情はそれだけで京都の魅力を感じさせるものですが、そこに季節感のある花々、特に桜の風景が重なると得も言われぬ妖艶な景観に変身します。また光り輝く紅葉と寺院のコラボは典型的な京都の秋の醍醐味を伝える作品となっていました。

34ページの「あだし野念仏寺　千灯供養」での石仏に灯る蝋燭の炎の輝きと揺らぎがこの世とあの世を結ぶ結界のような趣として伝わってきます。
44ページの「嵐山　日の出」での紫色から茜色へと変化する空のグラデュエーションと渡月橋と屋形船、家並などの黒く沈んだシルエットが絶妙のコントラストを創り上げていました。
45ページの「渡月橋　朝霧」では前ページの対岸の位置から同様の時間帯に渡月橋を写した作品ですが、墨絵のような淡い色彩に包まれた対照的な雰囲気を醸し出しています。
「鞍馬寺　朱塗りの山門」の赤と白の色彩の配合が自然の造り出した美の素晴らしさを切り取っていました。
「将軍塚展望台　京都夜景」の日没直後の京都市内の街の灯と紅に染まった空とがベストマッチしていました。

なお、桜をテーマにしたものは「京都御苑　近衛邸跡の糸桜」「高瀬川　一之船入」「平野神社　桜花」「仁和寺　御室の桜」「常照皇寺　九重桜」「常照寺　桜花欄漫」「哲学の道　関雪桜」「平安神宮　八重紅枝垂れ桜」「円山公園　祇園夜桜」「祇園白川　枝垂れ桜」「清水寺　桜咲く本堂」「毘沙門堂　枝垂れ桜」などで、写真撮影の際のアングルの参考にきっとなることでしょう。

紅葉の写真は多すぎて列挙できませんが、いずれも見事な出来栄えを誇る作品でした。他の花々や雨天の風情もまた格別で、「京都ってこんなに素晴らしいのか」という再発見をさせてくれる写真集だと高く評価しています。全ページに欧文解説が付き、最初に地図と目次、巻末に索引があり各寺院の住所が記してありました。京都観光のお供にも最適です。