「民都」大阪対「帝都」東京 (講談社選書メチエ) の感想
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参照データ
タイトル | 「民都」大阪対「帝都」東京 (講談社選書メチエ) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 原 武史 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784062581332 |
カテゴリ | ジャンル別 » ビジネス・経済 » 産業研究 » 交通 |
購入者の感想
関西の私鉄文化を、大日本帝国・天皇秩序との対立という立場で描いた本です。しかし内容に関して、考察が不足しているという感が否定できませんでした。
たとえば第5章の「阪急クロス問題」において、梅田界隈でまるで阪神急行電鉄(阪急)が高架の維持に固執し、国鉄との争いに敗れたため地上線への変更を余儀なくされたなどと解釈できる記述がありました。実際には大正15年に完成した梅田の高架駅は、このとき既に国鉄大阪駅を将来高架化することが計画されていたため、当初から仮構造であって地上線に移行することを見越したものです。対立はあくまで高架化工事の予算問題に過ぎません。
また大阪電気軌道・参宮急行電鉄(大軌・参急)の説明においても、金森又一郎社長の言葉を借り、まるで「精神報国」を目標として伊勢や名古屋へ延伸したというような記述になっていました。しかし、その裏にある伊勢電気鉄道との対立・合併と、旧:伊勢電線救済のためにも名古屋への延伸が必要とされたという事情、「聖都巡礼」を名目とするのが新路線の免許申請に好都合であったという時代背景、更に京阪電気鉄道系列の名古屋急行電鉄が名古屋進出を目指しており、それへの対抗という意味も持っていたということを、きちんと見据えた記述がなされていません。
関西と関東における国鉄・私鉄の関係の違いや、関西私鉄の文化を知るにはある程度有用であると思いますが、その様な考察ミスがあることを配慮に入れておいて欲しいと、正直感じました。
たとえば第5章の「阪急クロス問題」において、梅田界隈でまるで阪神急行電鉄(阪急)が高架の維持に固執し、国鉄との争いに敗れたため地上線への変更を余儀なくされたなどと解釈できる記述がありました。実際には大正15年に完成した梅田の高架駅は、このとき既に国鉄大阪駅を将来高架化することが計画されていたため、当初から仮構造であって地上線に移行することを見越したものです。対立はあくまで高架化工事の予算問題に過ぎません。
また大阪電気軌道・参宮急行電鉄(大軌・参急)の説明においても、金森又一郎社長の言葉を借り、まるで「精神報国」を目標として伊勢や名古屋へ延伸したというような記述になっていました。しかし、その裏にある伊勢電気鉄道との対立・合併と、旧:伊勢電線救済のためにも名古屋への延伸が必要とされたという事情、「聖都巡礼」を名目とするのが新路線の免許申請に好都合であったという時代背景、更に京阪電気鉄道系列の名古屋急行電鉄が名古屋進出を目指しており、それへの対抗という意味も持っていたということを、きちんと見据えた記述がなされていません。
関西と関東における国鉄・私鉄の関係の違いや、関西私鉄の文化を知るにはある程度有用であると思いますが、その様な考察ミスがあることを配慮に入れておいて欲しいと、正直感じました。