普通の家族がいちばん怖い―崩壊するお正月、暴走するクリスマス (新潮文庫) の感想

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タイトル普通の家族がいちばん怖い―崩壊するお正月、暴走するクリスマス (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者岩村 暢子
販売元新潮社
JANコード9784101305615
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

著者は本書の前書きで、「クリスマスや正月のさまざまなこと(注:要するに家事・準備等の事)は『主婦』や『母親』や『女性』がすべきことだと考えているからでもなく(中略)、(彼女らに)起因することだと考えているわけでもない。」と一応断ってはいる。しかし本文をみれば、正月支度を面倒くさがる主婦に対しては「恥ずかしさや後ろめたさはまったくみられない」と書き、煮しめを作らないと言う主婦の発言には「当然のことのように言う」と驚いて見せる。他にも「『恥』の感覚はない」とか「自分の事は棚に上げて」など、調査協力者の言動を特定の価値観を持って高みから見下すような表現には事欠かない。
それでも文庫版の後書きでは、自分は保守主義者でもなんでもなく、この本も伝統を守らないことを戒めたものではない、と言い切っているところを見ると、筆者自身が本書の末尾で触れている最近の主婦の一傾向=「言っていることとしていることの食い違いに気づかない人」の典型例のようにも思える。
著者は広告代理店勤務だそうだが、本書では何故か「メディア情報に軽やかに乗ったり流されたりすること」には否定的だ。そうしてみると、アサツーディーケイという会社は片や人々に対して新たなライフスタイルとやらを吹き込んでそれに乗っかり利益を得ながら、一方で本書ではそうした人々を揶揄する言説を振りまいていることになる。後書きにあるように「ユニークな会社」「懐の深い経営者」と持ち上げて済ますことができる話ではなく、どのような姿勢で社会に向き合っているのか、会社としての経営姿勢が根本から問われかねない。そういえば後書きでは延々と自ら属す組織やその長らを持ち上げ続けながら、肝心の調査協力者への謝辞が一言もない。御節やクリスマス飾りがどうのこうのという以前の、著者の人間性を垣間見たように思う。それなりの謝礼を支払えば何を言っても言わなくてもいい、ということなのだろうか。
最期に、本書では5年のインターバルをおいて2回の調査を行いその傾向に顕著な差があったことの原因として、データを示すことなく1955年生まれが分水嶺であると推論しているが、その社会学的うらづけは一切提示されない。著者が1953年生まれであることがその推論の裏にあるとするのは邪推が過ぎるといわれそうだな。

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