iPS細胞はいつ患者に届くのか――再生医療のフロンティア (岩波科学ライブラリー) の感想

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参照データ

タイトルiPS細胞はいつ患者に届くのか――再生医療のフロンティア (岩波科学ライブラリー)
発売日販売日未定
製作者塚崎 朝子
販売元岩波書店
JANコード9784000296182
カテゴリジャンル別 » 医学・薬学・看護学・歯科学 » 基礎医学 » 生化学・医化学

購入者の感想

 iPS細胞と言えば最先端のトピックであるが、本書を読むと大学2年生、3年生で習った発生学や組織学、生理学など基礎医学のことがしっかりと書かれていて大変懐かしい気持ちになった。
 私はクリニックを開業して気づけば5年目。頭の片隅に「たまには基礎医学もおさらいしなければ」とは思いつつも日々の仕事に忙殺されてすっかりご無沙汰してしまっていた。それが思いもかけずこの本で復習でき、とてもラッキーだった。
 最先端医学を覗くことは実は過去に積み重ねられてきた学問を振り返ることでもあり、それはiPSとは無縁の開業医にも非常に有益であると思う。
 もうひとつ、本書で大変感心したのは、一般向けに分かりやすく書かれたものであるにもかかわらず、正確さを全く失っていない点である。著者の博識さに乾杯したい。

iPS細胞を臨床に用いる際の最大のネックはガン化です.この辺りがどうなっているのか.それを知りたく本書を求めました.

ガン化の問題 --- 結論は,山中伸也教授自身が言うように安全性は未だ確立していない(117頁). iPS細胞は増殖力の強い点でガン細胞に似ている.iPS細胞に多能性を持たせる遺伝子4つのうちの1つ,c-Myeは自己複製するガン遺伝子で,iPS細胞が未分化のままでいるとガン化しやすい.これは重大です.培養中はiPS細胞を常に監視していて,未分化株を除去しなければならない.ところで,iPS細胞臨床使用の初例は2014年夏に予定されています.眼科の患者さんで,黄斑変性の網膜裏側に色素上皮細胞に分化させたiPS細胞のシート(1.3mm x 3mm)を貼ることになっている.手術が終わればその後4年以上にわたって経過を観察し,iPS細胞がうまく着くかどうか,腫瘍がうまれないかどうか,などをチェックします(20頁).眼はもともとガンの発生が少なく,万一腫瘍ができても見つけやすいし,レーザーで簡単に除去もできる.これらの利点があるから臨床応用の初例として選ばれました.手術をうける患者さんのために,また同様の眼科疾患で悩んでおられる患者さんのためにも私はiPS細胞の活着と非ガン化を祈ります.

iPS細胞作成から来年は8年目です.眼科手術に次いで脊髄損傷,心疾患,パーキンソン病などに臨床応用が見込まれているようです.そんな中で2012年にはES細胞,iPS細胞に続く第三の多能性幹細胞が東北大学出澤真理さんによって発見され,Muse細胞と名付けられました(29,33頁).Muse細胞はガン化することがきわめて少ない点でiPS細胞に優ります.新たな多能性幹細胞の出現で,発がん性を気にせず,しかも体内に注入すると血液を介して傷ついた臓器に自然と向かっていき.そこで修復されるべき臓器へと分化する(34頁).そうだとすれば,夢のような再生医療です.実用化に向かって目が離せません.というわけで,再生医療に興味のある読者に本書をお薦めします.Muse細胞,正しくは Multilineage-diffferentiated Stress Enduring

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