満蒙 日露中の「最前線」 (講談社選書メチエ) の感想

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タイトル満蒙 日露中の「最前線」 (講談社選書メチエ)
発売日2014-09-26
製作者麻田雅文
販売元講談社
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カテゴリ » ジャンル別 » 歴史・地理 » 歴史学

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 ロシア沿海州の拠点で不凍港をもつウラジオストクと、開発途上のシベリアを「中国国内(建設当時は清朝)を通過して」結ぶという奇抜なアイディアが生んだ鉄道は、数多の紛争を招くことになりました。
 タイトルに「満蒙」と打たれていますが、舞台となるのは、ロシアが中国東北(旧満州)に敷設したシベリア鉄道のバイパスかつ先行路線たる中東鉄道です。
 19世紀の最後の年、極東の防衛と開発のため、帝政末期のロシアはこの路線をロシアゲージ(広軌。線路と線路の軌間は1524粍)でに強引に建設しました。1952年に中国に返還されるまで、この鉄道はロシア、日本、中国による勢力争いの第一線であり続けました。本書は、この半世紀にわたって露日中三国がこの地で演じた相克の歴史を追います。
 日本は日露戦争後、ポーツマス条約で南満州鉄道を獲得しました。長春と旅順を結ぶこの路線も、もとはといえば中東鉄道の支線として建設されたものです。以来、満鉄と中東鉄道は満蒙の開発と物流の支配権を巡るライバルとなりました。
 本書の第三章では、ロシア革命後にもと軍人のホルヴァート率いる中東鉄道が、反革命派の拠点となった興味深い歴史が記されます。そして、後に首相となった陸軍の田中義一(当時参謀本部次長)が中東鉄道の反革命派を援助していたことも。
 反革命派が追放された後は、ソ連が鉄道経営に関与します。独裁者としての地歩を固めつつあったスターリンは、軍事的な観点からことのほか鉄道を重視し、その支配を確実なものとするため、ついには満州を支配していた軍閥、奉天派と戦端を開くに至ります。
 また、著者は日露両国ともそれぞれの国防政策の一環として満蒙に影響力を行使しようとするも、やがて支配そのものが目的化してしまったことを示唆します。
 20世紀前半、鉄道がどれだけ戦略的に重要であったか、改めて気付かされる一冊です。

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