街場の大学論 ウチダ式教育再生 (角川文庫) の感想

264 人が閲覧しました
アマゾンで購入する

参照データ

タイトル街場の大学論 ウチダ式教育再生 (角川文庫)
発売日2010-12-25
製作者内田 樹
販売元角川書店(角川グループパブリッシング)
JANコード9784043707041
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 教育学 » 一般

購入者の感想

本書では、大学運営における内田氏の「変化」を見て取ることができる。

本書の前半(00年代前半に相当するだろうか)において、氏は大学教員の評価システム導入を積極的に主張していた。
何でも、大学の世界には「5年以内に論文を1本も書いてない教授」というのがけっこういて、彼らは「タダ飯食らい」のように大学に寄生しているらしい。
そういったダメ教員の尻をたたき、組織全体のパフォーマンスを向上させるためには、大学は教員の働きを評価するシステムを作らなければならない。
それは、少子化によって将来確実に生じるだろう大学間競争を生き残るために必要不可欠の方策であるはずだった。

ところが、こうしたシステムを導入するには、とうぜんそのシステム構築という責務をなにがしかの教員が担当しなければならない。
そしてこういう仕事を押しつけられるのは、たいていまだ若手で、事務能力にも長けた(つまり研究者として前途有望な)教員である。
かくして面倒な仕事を引き受けた若手教員は、自身の研究の時間を削ってでも職務を遂行しなければならない。

内田氏は、このことによる損失を非常に重くみた。
いってみれば、これでは優秀な教員がダメ教員の尻ぬぐいをさせられていることになるからだ。
結果(00年代後半から)、氏は大学教員の評価ということに懐疑的になっていく。

普通の組織であれば、「コアとなる大多数の人間の平均値が上昇すれば、全体として成果が向上する」というのは正論である。
たとえば機械の工場などだったら、一握りの熟練工をレベルアップさせるよりも、大多数の平凡な工員の作業効率を上げる方がはるかに生産的である。
だが、大学という組織はそうではない。「ごく一握りの優秀な研究者がムチャクチャ成果を上げ、その他大勢はなんだか訳の分からないことをやっている(もしくは何もしていない)」というのが大学ほんらいのあり方だからだ。
こういう組織において、「成員全体の歩留まりを上げる」という選択は愚かしいものになる。

研究というのは、ある種「ばくち」のようなものである。

 現役の(そして今春で選択定年なさるという)人気大学教授が、気の向くまま、ブログに大学を巡る折々の感想・見解・批判を述べ立て、それらを編集した主要部分に、文科省の役人との対談などをまぶした1冊。章建てにメリハリが窺え、特に東京から神戸の女子大に赴任して約20年というポジションにある著者の、縦横無尽・自由闊達なタッチの教育時評論集という体裁になっている。

 ブログ掲載の折はともかく、1冊になると、不思議なことに、とりたてて「ここが面白い」「意表を突いて新しい」という箇所が見当たらなくなってくるが、身柄を拾ってもらった神戸女学院大学が好きで、「世の中が神戸女学院のようになればいいな、と思っている」(著者の近年のブログにあったくだり)というスタンスから、最近の国公私立大学の模様、および大学に足場を置いた身辺雑記を描いていて、飽きさせない書きぶりではある。日比谷高校と東大全共闘にいたことを、腰を引きつつ自慢するだけの第8章は、もうそろそろ「たいがいにして欲しい」とは思うけど。。。この点がうっとおしく、かつやっぱり全体の筆致に新鮮さがうかがえないので、☆は三つ。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

街場の大学論 ウチダ式教育再生 (角川文庫) を買う

アマゾンで購入する
角川書店(角川グループパブリッシング)から発売された内田 樹の街場の大学論 ウチダ式教育再生 (角川文庫)(JAN:9784043707041)の感想と評価
2018 - copyright© アマゾン通販の感想と評価 all rights reserved.