未踏召喚://ブラッドサイン (電撃文庫) の感想

とりあえず新シリーズということで、読んでみた。

が、いまいちスッキリしない。細かな考証とか、ストーリーの部分は、これまでの作品などにも通じるところがあり、好き嫌いはあるにせよ割と普通だと思う。とすれば、原因は登場キャラクターの言葉遣いだろう。いままでのキャラクターにしたって、変な喋りをする人物は大勢いたが、今回はメインどころの口調が不自然すぎるところが、気に入らない感じだ。今後シリーズを重ねるにつれ、面白くなっていく、あるいはこの話し方になれるのかもしれないが、現時点ではどうだろう、という感じが強い。

『とある魔術の禁書目録』、『ヘヴィーオブジェクト』等で独特の世界観に基づいたヒット作を世に送り出してきた作家、鎌池和馬。
本書『未踏召喚://ブラッドサイン』はこれらの作品群に並ぶ、まさに『鎌池和馬渾身の正統派新シリーズ(公式あらすじより抜粋)』
と呼ぶべき作品である。

まず目を引いたのが本書における召喚術『召喚儀礼』とそれを扱う召喚師に関する設定である。
『召喚師は励起手榴弾(インセンスグレネード)と呼ばれる、缶状の器具を用いることで、人工霊場というフィールドを展開し、その中で異世界の住人である被召物(マテリアル)と呼ばれる存在を、パートナーである依代に憑依させることによって召喚する事ができる』・・・というのが、『召喚儀礼』に関する大体の設定であり、本書の作中ではこれらの設定を活かした、鎌池氏ならではの戦闘シーンが多く描かれ、ストーリーを盛り上げるのに一役買っている、と言ってもいいだろう。

そして舞台設定。
本書の舞台となる『トイドリーム35(旧名・夏海市)』は、財政破綻から外資系巨大企業『トイドリーム社』のバックアップを受け、街一つが丸ごと巨大な遊園地のようになってしまったという設定であり、現実にはありえない状況を作り出す役目を担っており、これは『とある』に登場する『学園都市』、『インテリビレッジの座敷童子』に登場する『インテリビレッジ』同様、日本国内の都市でありながら異国、あるいは異世界のような情景が広がっている設定であり、『召喚儀礼』が普及している世界観とうまくマッチしている。

最後にキャラクター。
少女の「たすけて」という声に弱い最強の召喚師城山恭介(しろやま・きょうすけ)を筆頭に、水着を普段着に猛獣をペットにしている妹キャラや、ナイスバディな謎めいた美女、借金から召喚師になった巫女姉妹・・・等、様々なキャラクターが登場するが、群を抜いて魅力的なのが、本書の表紙を飾るキャラクター、『白き女王』だ。ネタバレ防止のため多くは語れないが、とても魅力的なキャラクターである、とだけ述べる。