ミクロ経済学 第3版 (現代経済学入門) の感想
参照データ
タイトル | ミクロ経済学 第3版 (現代経済学入門) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 西村 和雄 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784000266550 |
カテゴリ | ビジネス・経済 » 経済学・経済事情 » 経済学 » ミクロ経済学 |
購入者の感想
著者は高名な数理経済学者で、この本もミクロ経済学の入門書として第3版まで重ねた、人気の高い教科書の一つだ。レビューアーもこの本の第2版を経済学部の一年生向けのミクロ経済学の教科書として使ったことがある。そのとき気付いた「気になる」点が第3版では修正されているかどうかチェックしてみたが、訂正されていなかった。一つは、本書23ページに、部分均衡分析で一定(与件)とされる「他の事情」の中には「企業の生産技術や雇用量など」も含まれ、部分均衡分析ではそれらは「一定」と仮定される、と書かれている部分だ。しかし、「雇用量」とは労働の雇用量のことだろうか?そうだとしたら、投入物として労働しか使わない産業では、供給曲線は完全に非弾力的で、垂直な直線になってしまう。部分均衡分析では供給は一定と仮定する??労働以外の生産要素はどうなのか?著者はあらゆる生産要素の当該産業のおける「雇用量」は一定とすると考えているのだろうか?そうだとしたら、あらゆる産業の供給曲線は垂直でなくてはならない。1962年に書かれたミルトン・フリードマン「価格理論」には「他の事情一定」の意味について詳細な分析がある。著者はこの本をよく読んでほしい。もう一点は、31ページにある「需要の価格弾力性と収入の変化との関係」を示す表だ。価格が下落したとき、弾力性が1より大(小)であれば、収入は増える(減る)とある。いま、ある財は線形(直線)の需要曲線を持ち、ある価格のもとで弾力性は2であるとしてみる。価格が60%下落したとすると、需要量は弾力性2だから120%増える。ここまではよい、しかし収入は(1-0.6)×(1+1.2)=0.88となり、12パーセント減収となるではないか!もちろん、この表の結果は、価格の変化が微小であるときに、近似的に成立するにすぎないのであって、価格変化が大幅なときには正しくない。しかし、そうした警告はこの本には示されていないばかりでなく、その前のページには価格が75%下落する場合の例があげられ、あたかもこの表の結果がそうした価格変化が大きい場合にも妥当するかのように議論されている。実際に数字をあてはめて計算した初学者は混乱すること間違いないだろう。