薬局が変われば地域医療が変わる (医師と薬剤師の協働から始まる在宅医療イノベーション) の感想

現在薬局を取り巻く環境は変化おり、環境的な変化（病院から在宅へ、在宅死率上昇となり医療不足となる）人材的変化（薬剤師教育4年生から6年生による教育的変化）、ビジネスモデル的変化（従来の調剤薬局ビジネスモデルの成熟期入り新しいビジネスモデルが求められること）と大きく分けて3つの変化が起きており、薬剤師の仕事もそれに伴い変化することが求められる。つまり、従来の医師の処方箋通り正確に早く作ることの仕事から、処方箋をだした後に薬の効果が適正か、副作用は現れていないかを薬学をもとに薬剤師がフィジカルアセスメントし、評価し医師と共に、より良い医療を共同していく事が求められていることを、筆者の著書より学ぶことができます。理論だけで終わらない現場で実施できる本です。

移植医療にも携わった外科医が、薬局社長に転身。
異色の経歴を持つ筆者が、家業を継いでから10年の節目に執筆した本書。
そこには現在の医療の問題点と、今後の解決案がまとめられています。

タイトルこそ薬局や地域医療（在宅医療）にスポットが当てられていますが、その実態は現代の日本の医療・介護の問題提起とその解決策について述べられています。
超高齢化社会における医療費高騰や医師不足における医療崩壊、存在感が感じられない薬剤師など、医師としての経験に基づく筆者なりの分析は、非常に説得力があります。
また薬局社長として問題解決のため薬剤師に着目している点は、非常にユニークで斬新と感じました。
おそらくこの様な視点で日本の医療問題に一石を投じた書籍は、初めてではないでしょか。
医師・薬局社長の二足の草鞋を履く筆者ならではの切り口と思います。

そして何よりも驚くのは、既に問題解決に向けて行動を起こしている事です。
一般社団法人の理事長として三足目の草鞋を履き、次世代型の薬剤師の育成に取組んでいます。
真の医薬分業の実現に向けて、全ての薬剤師へエールを贈りまとめられています。

日本の薬剤師・薬学生にはテキストブックとして、医師・看護師など薬剤師以外の医療スタッフにはレファレンスブックとしてぜひ一読してもらいたいものです。
そして一般の方にも分かりやすく書かれた本書は、薬物治療におけるバイブルとして活用できるのではないかと思います。

医療・介護業界は、多死時代を目前にし、まさに変化を迫られている。
その中で、薬剤師が調剤（薬を調達し、お渡しする）の中に閉じこもるのでは、必要とされずに終わってしまう。
理想と現実に悩みながらも「おかしい」と感じる気付きを掘り下げる勇気を持つこと。
この実行が流れを生む。
よどみは、腐るだけ。
実行しようとする情熱こそが、人を動かす。
これを狭間先生の実績の記録と指針として表されたのだと感じた。
薬剤師は、職能集団である以上、ストライクゾーンである専門性＝信頼と責任は、外せない。
これに脅えることなく、しなやかさと打たれ強さをもって前進するエネルギーとなる内容だと思う。