失楽園 下 (岩波文庫 赤 206-3) の感想

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参照データ

タイトル失楽園 下 (岩波文庫 赤 206-3)
発売日販売日未定
製作者ミルトン
販売元岩波書店
JANコード9784003220634
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 詩歌 » 外国詩

購入者の感想

上巻で繰り広げられた、サタンの謀反と一大決戦の終始が踏まえられて、下巻では本題である楽園喪失のいきさつが語られる。
人間の些細な驕りや瞞着の心が、サタンの蛇を導き手としてではあるが、神意に対する取り返しのつかない背反へと陥れてゆく。上巻で展開されたサタンの失墜の、いわばダブルイメージが反映されて、失楽園の凄惨さと、サタンと違って救いの余地が残されているという希望が垣間見えるあたり、きわめて巧い。アダムとイヴの会話も、知恵の果実を食う前後では、素直に相手を受け入れる姿勢が無残な利己的論理に様変わりするなど、いやに生々しい。
中盤からは罪を負った人間と天使との問答になるが、無垢だった人・アダムの問いかけはすこぶる人間的なもので、異教徒にも案外納得がいきやすい質疑応答が繰り広げられる。ユダヤ・キリスト教徒が戒律を進んで求める身になるのも、まあ、分かる気にさせる。
サタンの失墜と人間の堕罪との重複。蛇にそそのかされて自ら罪に落ちるという受動性と能動性との混在、またそれゆえの絶望と希望のアンビバレンツ。「失楽園」というネタを最大に増幅させたミルトンの『失楽園』は、題材と形式とがぴたり一致しているという点でも、内容の豊穣さから見ても、正しく古典であり、ひとつの完成形であること疑いない。

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