エネルギー問題入門―カリフォルニア大学バークレー校特別講義 の感想

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タイトルエネルギー問題入門―カリフォルニア大学バークレー校特別講義
発売日販売日未定
製作者リチャード・A. ムラー
販売元楽工社
JANコード9784903063652
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » エネルギー » 一般

購入者の感想

原題は「未来の大統領のためのエネルギー」であり、「地球温暖化」と「エネルギー安全保障」の両面から、原子力、太陽発電、風力、天然ガス、石油、石炭、バイオ燃料の優劣を、データに基づいて論じており、水素、電気自動車、燃料電池、省エネという項目まである。
著者は、自分でプロジェクトを起こして、膨大なデータを処理した上で、「地球温暖化」は人間の活動によって発生しており危険であるという立場である。「エネルギー安全保障」は、アメリカの政策が産油国などの影響を受けてはいけないということではあるが、日本にとってもエネルギー資源の輸入を少なくし、安定的に入手するという面では有用な指標だ。
説明は平易で、多くのデータが掲げてあり、冗長な部分がない。同じ電力を生成するのに、どのエネルギーを使うと、コストがいくらかかり、そのエネルギーがどのような問題を引き起こすのかが、個別に、クリアに書いてある。
あたりまえだが、著者の意見全部には賛成出来ない。例えば、原子力廃棄物については、原子炉が止まって100年経てば、原子炉で用いられている主要放射性物質であるウラニウムの放射能は天然に存在する状態の100倍になり、10%の廃棄物が漏出する可能性が10%ある貯蔵システムを作ることができれば良く、これは技術的に難しくないとしている。しかし、地下水汚染や、日本は地震国であることを考えるとこんなに単純だとは思えない。しかし、根拠がはっきりしていて、議論しやすい。
著者の意見が全て正しいと思うのは危険だろうが、この書物は、豊富なデータ、説明の簡明さ、公平さから見て、原子力や再生可能エネルギーを含む日本のエネルギー問題に関心がある人にとって、極めて有用である。

3.11以降からエネルギー問題への関心が国内でも高まっているが、
それに対応するための書籍は心情的反原発的立場が多いし、
かといって福島原発があんなことになった以上「原発を進めるべき!」と言われてもやはり身構えるし、
「結局どっちがほんとなの?」と混乱するばかりの状況だった。
その点で、それぞれのメリット・デメリットを示しつつ議論を進め、
様々なエネルギーを包括的に論じる本書はまさに待ち望まれていた本だと思う。

特に、何かと「自然エネルギー」というカテゴリとして、
乱暴に一緒にされがちな太陽光だとか風力だとか地熱だとかを個別に論じている点が良い。
それぞれにそれぞれの特徴があり、一概に「これらが原発に取って代わる!」とは言えないはずなのに、
最近のエネルギー書籍は何かと一緒くたにして論じており、そこらへんが胡散臭かった。

この本の記述が完全に中立であるわけでも、「正解」を教えているわけでもないが、
「エネルギーの問題は、そんな簡単な話じゃない」という当たり前すぎる事実を教えてくれる点でも、
本書は今必要な本だと思う。

読むべき価値のある本だった。
次世代エネルギーについて語った本は、おびただしい数が出ている。しかしそのほとんどは、原発推進か反原発のいずれかの立場から書かれているように思う。
すなわち、原発推進派の立場ならば再生可能エネルギーがいかに夢物語であるかを力説し、逆に反原発ならば、原発の非を説きつつ、再生可能エネルギーをやたらと持ち上げて見せる。それなので我々はその両方を読まなければならない。
本書では、原子力と再生可能エネルギーを横一列に並べたうえで、それぞれを論評・評価してみせている。実に興味ぶかい本だ。

本書では、フェアな立場ですべてのエネルギーを論評・評価していると言いたいのだが、いささかバイアスがかかっているようにも思えるのは、著者も人間ならば仕方がないのかもしれない。

面白く読めるのはそれぞれのエネルギーの評価だ。
太陽光、風力発電は技術革新の必要があるものの、将来有望なエネルギーソースであると評している。原子力も次世代原子炉を使うとの前提ながら、まだまだポテンシャルのあるエネルギー源であるとしている。
逆に世上評価の高い水素エネルギーや地熱、電気自動車などは、将来性は無いと斬って捨てている。

さて、私が脱原発の意見を持っているからかもしれないが、筆者の原子力に対する見方はやはり甘い気がする。
本書では東芝が開発している次世代小型原子炉を紹介しつつ、まだまだ原子力は捨てがたいとの主張を展開していく。東芝の原子炉が安全な理由として冷却剤に液体ナトリウムを使うからだと説くのだが、すでに「もんじゅ」の液体ナトリウム事故を知る日本人としては、こんな安易な主張でよいのかと驚いてしまう。
さらに核廃棄物の問題などは大したことは無いと、あっさり言い切るのにはどうかと思ってしまう。

次いで、未来のエネルギーとして期待される核融合について、筆者は「この本を読んでいる間に、実用化の条件が達成されるかもしれません。」とまでのたまって、実に希望的な観測をしてみせるのだが、私はすでにこの本を読み終わっているが、核融合実用化前進のニュースなどまったく聞こえてこない。

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