農業問題: TPP後、農政はこう変わる (ちくま新書) の感想

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タイトル農業問題: TPP後、農政はこう変わる (ちくま新書)
発売日販売日未定
製作者本間 正義
販売元筑摩書房
JANコード9784480067616
カテゴリ » ジャンル別 » ビジネス・経済 » 経済学・経済事情

購入者の感想

現実問題として変わらざる負えないように見えるのですが、やはり利権にしがみつく人たちはしっかり掴んで離そうとしないのは今も昔も変わらず、保護したいのか骨までしゃぶりたいのか疑問に感じますが、金のなる木をどのように守るかの手法がよく分かって面白かったです。

まず、現在の農業が置かれた立場とその問題についてわかりやすく論点を整理して書かれている
という点で、これから戦後から現在に至る日本の農政を勉強したい方にとっては必読書と言ってよい。
ただし、著者の本間正義は第二次安倍政権で規制改革会議農業改革グループの専門委員を務めており、
アベノミクスに添う新自由主義のバイアスがかかっていることを注意して読まなければならない。
本書の視点は序章で明確に語られている。
端的に示すと、農業の構造調整を推進すること、に尽きる。
構造調整とは生産性の低い部門から経済資源を生産性の高い部門に移すことで
ぶっちゃけて書くと、狭い耕地で自給的な農業を営んでいる農家にはさっさと退場してもらって
農地を集積して、TPP後の低価格の輸入農作物に対抗できるような高い生産性を上げよ。
従来、零細農家が低い農業生産性でも維持できたのは、農協を背景とする族議員による圧力で
国民の税金を補助金として受けてきた農家の政治力に負うところが大きい。
であるから、こうした旧体制を打破して、国際競争に耐えうるように日本の農業を構造的に改革せよ
という、どこかで聞いたような、論旨展開になる。
これは、かつての小泉純一郎の唱えた郵政民営化のロジックと極めて相似形を成す。
郵政民営化や労働者派遣法の改正による非製造業への派遣労働者解禁の結果、
現在の日本は格差社会にあえぎ、郵政改革のごたごたは未だ収拾がつかない状態となっている。
安倍―本間路線が実施されたら、さらに日本の農業は壊滅し、食の安全性は大きく脅かされることになる。
以下、その理由を書く。
筆者は日本のTPP参加を是としたうえで、TPP後の農業の未来図を描いて見せる。
それは、農地集積による規模の利益を追及した低コストのコメ作りである。
その例として、岩手県花巻市で試みられている乾田直播の農法をあげる。
これは東北地方の平均生産費の56%というコストダウンだという。
こうした技術で、関税撤廃によって海外から輸入される低廉なコメに対して価格競争で勝つというシナリオである。

TPP、攻めの農業、農地集積バンク、減反廃止等、最新の農業問題をコンパクトにまとめた、なかなか読ませる本です。
特にTPPについては、GATTからの一連の流れがよくわかります。

本書の一番注目すべきところとして、農協系統の「TPPで日本農業はめちゃくちゃになる」という主張に、土台からしっかり論理を組み立てて反論しているところがあると思います。
以前の牛肉オレンジ自由化でどうなったかと言われると農協系統が言うほどの惨事ではなかったわけで、今回もそうだろう、むしろ「攻めの農業」「メイドバイジャパニーズ」でBRICs諸国にアピールすれば生き残れる、という主張は筋が通っているように感じました。
ただ牛肉オレンジのときと違うのは、原発事故もあり日本の農畜産物が本当に世界に信頼されているのかが極めて怪しくなってきたことや、BRICs諸国の急速な発展や、バイオ燃料がクローズアップされてきたこともあって世界の食糧事情が変わってきたことがあります。(国内でも「福島県の食べ物は買わない」という人も残念ながらいるわけで…。)
煽り系農業雑誌の「農業経営者」誌よりは論理的なのですが、やはり「農業でビジネスチャンス!」と煽るタイプの本だな、という印象です。
その辺のバイアスに気をつけて読めば、いい本なのですが…。

とりあえず星4つ。
逆の意見も両方見ることをお勧めします。

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筑摩書房から発売された本間 正義の農業問題: TPP後、農政はこう変わる (ちくま新書)(JAN:9784480067616)の感想と評価
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