城 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル城 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者フランツ・カフカ
販売元新潮社
JANコード9784102071021
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » ドイツ文学

購入者の感想

「変身」「審判」は一応オチ(主人公の死)がありますが、「城」にはオチがありません。

カフカの描く不条理は「=ゴールにたどり着けないほどのとてつもないまわりくどさ」だと思うのですが、「城」ではもうほんと、あたま狂いそうなくらい、全部が全部まわりくどいのです。

だから、「早く話をすすめろよ〜!」と思うのですが、なぜかそのまわりくどさにカタルシスを感じてしまうのは、やっぱり現代というまわりくどい世界に暮らしている私の心がそれに安心してしまうからでしょうか。

ということで、まわりくどいのは全然好きじゃないのに、オチがないのも好きじゃないのに、僕はカフカの長編作品の中ではもっともまわりくどいこの「城」が一番好きなのです。一番憎らしいのに、一番好きなのです。まわりくどい言い方ですみません。

故に、カフカ三部作は「変身」「審判」「城」の順番で読むと、よりそのまわりくどさによる文学的カタルシスが味わえると思います。いらいらしつつも。

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それから蛇足になりますが、この作品をレビューしてる方々はすごい的確でおもしろいので、他の作品レビューも見てみるといいと思います。

ある町に測量師として雇われて赴任してきたはずのKは、そんな職などないことを宣言され、村中の何もかもから翻弄されるような毎日を送るようになる。すべての指示は城から出ているようなのに、城に近づくこともできなければ、城の人間と話すこともできない。目に見えないヒエラルキー、タブー、暗黙のルールにしたがって行動する村民たち。その中においてKはまさに異物である・・・。
Kの測量師、つまり外から観察する人、という職業の設定がすでにKの存在の危うさを暗示しています。そんな職業を持つ人間が存在するということ自体がすでに何かの間違いなわけです。必要なのは、システムに組み込まれ、働く人であり、見るだけの人など不要なのです。複雑な生い立ちをもちアウトサイダーとして生きることを宿命づけられたカフカ自身の、共同体のシステムに入り込めないことによる悲劇、孤独、疎外感のようなものが、Kというキャラクターを通して体現されているようです。
私的なことはあまり描かれず、すべての登場人物がその職業を通して規定されているというのも現代的です。職業のないものは限りなく無に近い。高度にシステム化された社会における、そんな思想が反映されているようです。何もかもが整理され、すべてがシステム化されていく20世紀初頭の世相を反映してか、硬直したシステムがもたらすであろう暗い未来を見据える視点に、この本の現代的意義があるように思えます。人間が作ったはずのシステムのもつ逆説的な非人間性を喝破しているのが本書ではないでしょうか。

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