アジア主義 ―その先の近代へ の感想
参照データ
タイトル | アジア主義 ―その先の近代へ |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 中島岳志 |
販売元 | 潮出版社 |
JANコード | 9784267019715 |
カテゴリ | 歴史・地理 » 世界史 » アジア史 » その他 |
購入者の感想
このような既存の思想に関する本については、期待される役割は主に2つあると思います。1つは、入門書としての役割。もう1つは、その思想を深化、発展させる役割です。
まず、前者についてですが、一定以上の水準に達していると思います。アジア主義の歴史に関わる人物の伝記を中心に、その多様な思想が、押さえるべきところをきちんと押さえ、きれいにまとまっています。文章にクセがなく、読みやすいのも高評価のポイントです。
そして後者についてですが、こちらはあまり評価できません。
著者の主張を要約すると、「多と一の絶対矛盾的自己同一性」(西田幾多郎の言葉)という共通項によって結び付くアジアが、政治的に連帯し、近代西洋世界に対する価値の巻き返しを進めるべきだ、ということになります。
この主張には、大きな見落としが2つあります。1つは、「多と一の云々」等という哲学的なスローガンでは、大衆に訴えかける必要のある政治的なスローガンにはなり得ないということ。著者は、EUの例も引き、これぞアジアの目指すべき姿、と言わんばかりです。しかし、EUの場合は、かつてヨーロッパ世界はローマという1つの国であったという歴史的裏付けがあります。同列に考えるのは少々厳しいものがあるでしょう。
もう1つの見落としは、アジア諸国が今まさに、近代西洋的な工業化によって、発展しているという事実。そしてむしろ、近代を超克しようという風潮は、ヨーロッパやアメリカ、日本といった国々に多く見られるという事実です。成る程、20世紀前半であれば、近代ヨーロッパ対それ以外のアジアという図式も成り立ったかも知れませんが、現代にそのまま当てはめるのは無理があります。
以上の理由から、本書は21世紀における新しいアジア主義を提唱するものとは言い難い。しかし、アジア主義についてあまり知らない人にとっては、格好な入門書となるでしょう。
そして出来れば、本書でアジア主義を分かったつもりにはならず、紹介されている多数の文献に直接触れてみてはいかがでしょうか。
まず、前者についてですが、一定以上の水準に達していると思います。アジア主義の歴史に関わる人物の伝記を中心に、その多様な思想が、押さえるべきところをきちんと押さえ、きれいにまとまっています。文章にクセがなく、読みやすいのも高評価のポイントです。
そして後者についてですが、こちらはあまり評価できません。
著者の主張を要約すると、「多と一の絶対矛盾的自己同一性」(西田幾多郎の言葉)という共通項によって結び付くアジアが、政治的に連帯し、近代西洋世界に対する価値の巻き返しを進めるべきだ、ということになります。
この主張には、大きな見落としが2つあります。1つは、「多と一の云々」等という哲学的なスローガンでは、大衆に訴えかける必要のある政治的なスローガンにはなり得ないということ。著者は、EUの例も引き、これぞアジアの目指すべき姿、と言わんばかりです。しかし、EUの場合は、かつてヨーロッパ世界はローマという1つの国であったという歴史的裏付けがあります。同列に考えるのは少々厳しいものがあるでしょう。
もう1つの見落としは、アジア諸国が今まさに、近代西洋的な工業化によって、発展しているという事実。そしてむしろ、近代を超克しようという風潮は、ヨーロッパやアメリカ、日本といった国々に多く見られるという事実です。成る程、20世紀前半であれば、近代ヨーロッパ対それ以外のアジアという図式も成り立ったかも知れませんが、現代にそのまま当てはめるのは無理があります。
以上の理由から、本書は21世紀における新しいアジア主義を提唱するものとは言い難い。しかし、アジア主義についてあまり知らない人にとっては、格好な入門書となるでしょう。
そして出来れば、本書でアジア主義を分かったつもりにはならず、紹介されている多数の文献に直接触れてみてはいかがでしょうか。
幕末・明治維新から戦前の時代を貫く、アジア主義の系譜について詳しく分かる。思想潮流が分かるだけでなく、アジア主義者たちの伝記群が興味深い。平易な解説で一輝に読ませる