世界史の大転換 常識が通じない時代の読み方 (PHP新書) の感想
参照データ
タイトル | 世界史の大転換 常識が通じない時代の読み方 (PHP新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 佐藤 優 |
販売元 | PHP研究所 |
JANコード | 9784569830711 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門 |
購入者の感想
佐藤優氏と宮家邦彦氏という二名の元外交官が、日々報道される国際情報を理解するために必要な歴史的な大局観を意識しつつ、今後の世界情勢について語り合った一冊。新書にも関わらず内容は高度で、質的にもボリュームがあった。第二次大戦後の冷戦期には、共産主義への警戒から、自由主義・資本主義的な日本であってもある程度は社会民主主義的な福祉政策を重視せざるを得なかったが、ソ連の崩壊以降は資本主義的な思考がより重視され、日本だけでなく、西側陣営の各国で社会格差がより拡大してきている。各国がより自国の利益を重視するため、イスラム国によるシリア戦争の後半期には戦後のプレゼンス拡大を狙って、ロシア・トルコ・イラン・サウジなどによる摩擦が表面化した。またシリア戦争から脱出したイスラム系ジハーディスト達は中央アジアの破綻国家に潜伏し、新たな地域紛争の可能性を創り出している。欧州各国はアフリカのムスリム達を社会に取り込もうとしてきたが、結局、移民たちとの社会格差は解消されず、若い不満層の一部が危険思想を持つ状況になった。そしてアメリカはトランプ大統領の就任以降自国利益を第一に考える傾向が強まってきている。そんな中で確固としたイデオロギーは無いものの、強い経済力で国力を増強させてきているのが中国だ。日本をはじめ各国はどういった対応を考慮すべきなのかと思案する。まずアメリカ、欧州、日本については社会的不平等というダークサイドが膨張してきており、これに対応していく必要があろう。また中国は今後中央アジアや新疆ウイグル地域でのイスラム主義との衝突を経験する可能性がある。中東はトルコの影響力が低下し、ロシア、イランの影響力が高まってくるが、核拡散問題、クルド人独立問題、サウジ、イラン、イスラエル関係なども緊張する可能性がある。いずれにせよ帝国主義の下での各国の権益拡大はノールールの総合格闘技に近い部分があるので、日本としても情報収集力を強化して、自国権益の維持により注力する必要がマストであろう。