隼 陸軍一式戦闘機 (エイムック 3255 第二次大戦機DVDアーカイブ) の感想

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現存するオリジナル機が少ない、一式戦闘機「隼」の実機構造が詳細に判る決定版です。

千島列島から回収した4機分の残骸から、リバースエンジニアリングの手法で「新造」された
ものですが、残骸の主翼構造等は必見です。3桁＋多数の翼幅方向の小骨状構造材は、
主翼に機銃が搭載できないデメリットを甘受しつつ、実は外皮部分の強度が高く頑丈で
あるが故に、大容量の燃料タンクが格納でき、しかも、初期型から厚地フェルト材の簡易
防弾を持っていたというのが、いかにも陸軍機らしいです。新造時の各部構造も、実機なら
ではの詳細さが貴重な資料です。

零戦とよく比較されますが、実は、この大型タンクの搭載は、設計時に新人設計者が目一杯
のものを図面化し、小山主任が「大きいな。でも、全量入れなければよかろう」と採用した
のが、結果的に大航続距離を実現し、九七式戦闘機に運動性で劣る、と言われたのを
蝶型フラップで補って、結果的には終戦間際まで、ベテランパイロットには「武装が貧弱で
”落とせないが絶対に落とされない”自信が持てた」というほどの軽快な操縦性を確保して
います。

無理を重ねて性能が低下して苦闘した、海軍の零戦に比べて、比較的スムーズに二式単戦、
四式戦という後継機に恵まれ、一貫した小山デザインのマイルストンとなった機体です。
有名なのが、ニュージーランドでレストアされ、オリジナルエンジンで地上滑走まで可能な
稀少な一型（機首の環状オイルクーラーが特徴的）もしっかり紹介されており、付属DVDには
エンジン始動・地上滑走～滑走路上での浮上も収められているのが嬉しい。日本のウォー
バードファンには必見の1冊でしょう。野原茂氏のカッチリした作図と、柔らかなタッチのカラー
イラストも魅力です、お勧めです。

尚、近年になって発見された、二式単戦の実機構造が判るのがこちらです。カラーグラビア
だけ目的でも価値ありです。