現場主義の競争戦略: 次代への日本産業論 (新潮新書) の感想

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タイトル現場主義の競争戦略: 次代への日本産業論 (新潮新書)
発売日販売日未定
製作者藤本 隆宏
販売元新潮社
JANコード9784106105494
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購入者の感想

本社よ、覚醒せよ。
長らく日本の製造業に携わってきた著者が語る、日本の競争戦略、経営戦略論。

公演を基にしているので、論拠としての詳細なデータには乏しいが、現場を熟知した著者が語る主張には説得力がある。

日本には、日本に合った競争戦略、成長戦略がある。
欧米の真似事でしかない、金融を機軸とした成長戦略は、日本では限界がある。

「ものづくりに拘泥していてはダメになる」「先進国としてものづくりを捨てて米英に追随しサービス産業特化せよ」といった過剰な悲観論や、「日本人には擦り合わせ型DNAがある」「日本人は生来ものづくりが得意だ」といった過剰な楽観論を排し、「沈黙の臓器」である「現場」を生かした競争戦略が日本では必要となる。

「経済」は「産業」の集まりであり、「企業」の集まりでもある。産業も企業も、結局は「現場」の集まりである。経済学の論理から導かれる産業論も勿論必要となるが、現場から見上げる産業論や企業論も欠かすことができないものである。

「擦り合わせ型(インテグラル型)」と「組み合わせ型(モジュラー型)」の分類だけではなく、各国の歴史文化による組織能力や比較優位製品についての言説や、VWとトヨタの「モジュール化」の違いや、災害時に「設計情報」を避難することで別の場所で復旧するサプライチェーンの「バーチャル・デュアル化」など、単なる理論や事例紹介に止まらず、とても興味深い内容となっている。

最近、アップル社やソニーを引き合いに出して、製造業のサービス業化を進めようとする動きが盛り上がってきているが、逆に、サービス業の製造業化も進んでいくだろう。(例えばグーグルのように)

その時に、サービス業が成功するカギは、やはり現場の生産性にかかっている。そして、現場力を生かすための本社力にもかかっている。

日本のことを過剰に持ち上げることは不要だが、卑下する必要もない。

「現場主義の競争戦略」は、製造業に限った戦略の話ではない。

私はこの著者のことを誤解していたのを反省せねばならない。
この著者は、何かと言うと「擦り合わせ型」だとか「アーキテクチャ」などといった独りよがりの用語を振りかざすから、てっきり製造工程オタクだと思っていた。
ところが今回の新著では、一般人にわかるように、しかも一般人の知りたいことを、この著者にしては珍しく、オタクな物の言い方ではなく、世のため人のためという視点で書かれている。
「もう日本は製造の場所としてはダメだ」という無責任かつ無根拠な日本製造業おしまい説に対する、現場主義、実証主義者の渾身の反論だ。

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著者は年間50回も工場の現場に足を運ぶというから、東大経済学部の教授としては異色の製造工程オタクと言っていいし、ご本人もそのことを誇りにしていることが文章から伺える。

日経新聞の「経済教室」欄に比較的頻繁に登場するたびに、主張する内容が例によって「擦り合わせ型」だとか「アーキテクチャ」といった「特殊用語」を駆使した、まったくもって狭隘な趣味的領域であるようにしか読めない論考が多かった。

なによりも、この人の大好きな用語である「ものづくり」という言い方が、一般読者には「ああ、これは組立ラインの工程をどうするかという話だ。自分には関係ない」と思われてしまう危険があったし、おそらく実際にそういう読者は多かっただろう。

それでも、実証主義者=フィールドワーカーは抑制的な生き物だ。文化人類学、社会心理学など、人間の営為そのものを対象とする学問分野では、フィールドワークを重視する。そういう人たちは、毎回現場を歩き回り、ファクトを集める。

そこから、何か理論らしきものを抽出することもあるが、あまり断定的に「だから、こうなのだ」という物の言い方はしたがらない。あくまで自ら観察したファクトの収集自体を目的としている節がある。

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