葬られた王朝―古代出雲の謎を解く (新潮文庫) の感想

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タイトル葬られた王朝―古代出雲の謎を解く (新潮文庫)
発売日2012-10-29
製作者梅原 猛
販売元新潮社
JANコード9784101244143
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

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梅原猛はかつて『隠された十字架』で再建された法隆寺は聖徳太子一族の怨霊を鎮
魂するための寺であると説き、『水底の歌』で詩聖柿本人麿は流罪になり刑死した
宮廷の高官であったと唱えた。いずれも定説を根底からくつがえす大胆な所論であ
り、史学界からは妄説として誹謗、冷笑、黙殺されたが、一般読者からは喝采をあ
び、梅原古代学とか梅原日本学という言葉さえ生まれたのであった。

怨霊として祀られたのは聖徳太子や柿本人麿だけではない。大和王朝に国を譲った
出雲王朝のオオクニヌシこそ大和朝廷の闇将軍ともいうべき藤原不比等がもっとも
手厚く祀った大怨霊神であった。建設当時の出雲大社は現在の社殿の2倍の 48 メ
ートルもの高さがあったという。皇室の祖先神アマテラスの坐します伊勢神宮より
もはるかに壮大な建造物である。スサノオがつくりオオクニヌシが発展させた出雲
王朝は、天孫ニニギに国譲りせざるを得なくなった。オオクニヌシは壮大な神社に
祀られることを条件に稲佐の浜に身を隠したのである。

梅原は,前二著に先駆けた論考『神々の流竄』において、記紀の出雲神話なるもの
は、大和朝廷の影の実力者藤原不比等がその宗教政策を遂行するためにヤマトに伝
わる神話を出雲に仮託したものと論じた。そして「ヤマタノオロチは三輪山である」
など、まさに妄想に妄想を重ねた議論を展開した。ところが近年出雲地方から大量
の銅鐸、銅剣、銅矛が一挙に出土し、四隅突出型墳丘墓が数多く発見された。これ
は出雲を中心に強力な王権が存在していたことを意味する。梅原の「神々の流竄」
説は成立しなくなった。梅原が齢84を超えて自説の批判、撤回、修正に踏み切った
のは了とするが、かつて真淵や茂吉の通説を木っ端みじんに打ち砕いた舌鋒の鋭さ
が影を潜めたのは物足りない。とはいえ、出雲王朝の建国、発展、終焉をわかりや
すく描いた本書は神話時代の古代史としてはたいへん興味深い。

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