孤独の太陽 の感想

桑田さんの、決してサザンの中ではここまで自身と向き合える事はなかったと思える個人的な作品。今、聴いてみても、現在（2017年）から20年以上の前のものだけど、この時に歌われた日本の状況と現在とが殆ど変わっていない事に愕然とする、というか更に悪化している事に気づく。悲しみのニュ－スが更にジョ－クみたいに語られたり、しゃ-あないことでいつの間にか戦場みたいな所へ駆り出されたり、弱者から搾取していることに気付いてしまっても戻ることができない自分だったり、・・いろんな登場人物たちの、それぞれの心情を告白した作品（と、私が勝手に思っているだけだけど）。この時期に-さのさのさ-ツァーが行われているが、最後に歌われていたヨイトマケの唄を聴くと今でも涙が止まらず（このCDには未収録）。この後のサザン再開直後のシングル＜マンピ－の～＞までが、自身に正直だったと（私が思う）桑田さんの絶頂期。このあとから本格的にサザンが日本の国民的バンドと言われる様になり、と同時に（私が思う）素の桑田さんも消えてしまった。が、またもう一度戻って来てほしい、今、また思うことがあったらそれを歌ってほしいと思う今日この頃です。

　1994年発表のソロ２作目。2002年のSolo３作目「Rock’n Roll Hero」がエレクトリックの傑作なら、こちらはアコースティックの傑作だ。いずれもそのテンションは最後まで落ちない。歌詞も歌も凄いし、演奏の生ギターも激しくかき鳴らされて迫力満点だ。全体としてはBob.Dylanを強く意識した音作りだと言えるが決して批判ではない。これが凄いんだ。ここまでDylanを消化しきったアーティストを他に知らない。拓郎もここまで到達していないと思う。母を亡くした後という局面もあって言いたいことをそのまま歌詞にして何の衒いも無く録音した清さが素晴らしい。

　「漫画ドリーム」 、「月」 、「エロスで殺して」、等全ての曲に驚くのだが、やはり「すべての歌に懺悔しな!! 」の歌詞には震えたね。言っちゃいなって、言っちゃったって感じ。「貧乏ブルース」はモロにDylanで凄んげぇよ。最後の「JOURNEY」でホッとした。緊張感が途切れない一枚でした。