新版 動的平衡: 生命はなぜそこに宿るのか (小学館新書) の感想

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参照データ

タイトル新版 動的平衡: 生命はなぜそこに宿るのか (小学館新書)
発売日販売日未定
製作者福岡 伸一
販売元小学館
JANコード9784098253012
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

「生命現象とはタンパク質の合成と分解のサイクルから構成される<動的平衡>系である」、との著者の従来の主張を豊富な例を用いて非常に分かり易く解説した秀逸な書。デビュー作(?)「生物と無生物のあいだ」の時から感じている著者の筆致の巧みさ(湯川秀樹氏、寺田虎彦氏など、科学者の中には筆力の高い人物も多い)が益々冴えて、本当は難解な分子生物学事象を読者に身近なものとする事に成功している。

「歳を取ると一年が短く感じられる理由」、「ショートケーキの太らない食べ方」といったユーモラスな話題を散りばめながら、生命現象の本質に迫る解説をしたかと思うと、記憶を司る脳中の(個々の)細胞は常に入れ替わっているので、細胞(分子)は(HD,CDの様な)恒久的記憶媒体とは成り得ず、人間が"記憶"と思っているものは常に"現在"の思惟であるといった日常において人間が陥り易い錯覚を指摘してハッとさせたりと縦横無尽である。そして、著者の意匠としては後者に比重を置いている様である。即ち、「生命とは機械のパーツを集めたもの」ではなく、「生命は人間がコントロールするには向かないもの」であるとの主張である。進化論は前面に出て来ないが、長~い"時間"を掛けて出来上がった現在の生命(生物)を人間がいじる事(遺伝子組換食品、ES細胞、iPS細胞など、これには当然異論もあろう)への警鐘の念が強い。そして、まさに「生物と無生物のあいだ」のウィルスと抗生物質とのイタチごっこの話を持って来る辺りは語りの妙である。

終盤で、<動的平衡>系を「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」に喩えて、「可変でありながらも持続可能な系」と改めて言い換えて解説している点にも著者の深意が窺えた。なお、単行本に加筆した第9章で、<動的平衡>系の可視化用のモデルを提示し、これをオートファジー理論と結び付けている点も興味深い。全体として、自然と生命に対する畏敬の念に満ちた含蓄の深い快著だと思った。

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