誰もボクを見ていない: なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか の感想

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タイトル誰もボクを見ていない: なぜ17歳の少年は、祖父母を殺害したのか
発売日販売日未定
製作者山寺 香
販売元ポプラ社
JANコード9784591154601
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

一審判決後にいくつかの新聞記事でこの事件について読んだものの、少年の生い立ちについてはこの本を読んで初めて、その片鱗を知ることができた。

家賃のためのお金をゲームに使ってしまう浪費癖のある母親。父親がいなくなった後、母親が付き合っていた別の男性を追いかけて姿を消し、まだ幼かった少年は一ヶ月も放って置かれた。母親やその恋人から受け続ける凄絶な身体虐待や性虐待に加え、まだ未成年の少年は働こうとしない母親の代わりに、生活費を稼ぐ立場に立たされる。職場から前借りできなくなると「お前のせい」と責められる。学校に行かせてもらえず、社会から遮断された状況の中で、「唯一」そばにいる母親から巧妙な心理操作を受けて少年がじわじわと追い詰められていく様子が浮かび上がってくる。

児童相談所(児相)がこの親子の存在に気づき、少年にもやっとフリースクールに通い、他の人たちとの接点ができるかと思いきや、母親が「鳥かごみたい」と言い出し、一家は姿をくらます。少年の前にやっとかかりはじめた「外の世界との橋」は、母親の一言で崩されてしまう。 

少年の実母は「母親」と呼ぶにはあまりにも酷く、読んでいると怒りを感じるほどだ。同時に、少年にとっての「世界」をこの母親がほぼ独占していたことも理解しなければこの事件の裁きなどできない、と思う。裁判でどれだけの証拠が提示されたにせよ、法で裁ききれることと、法の力では是正できないことがある。たとえばこの母親の場合、通常の社会で期待される責任(自分が世に送り出した命を守る、嘘をつかない、盗まない、虐待しない)を明らかに果たしていない。何らかの精神的あるいは人格的問題があるのでは、と推測される。少なくともこの母親が他者を巻き込んで生きていく限り、その他者が本件の少年のように「影響を受けやすい立場」にいる場合、社会として本件のような事件の再発を、どう防げるだろうか?

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