安倍三代 の感想

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安倍三代。安倍首相はどちらかと言えば、父晋太郎氏以上に、岸信介元首相を
自らの目標・手本にしているように見える。岸は、母方の祖父であり、安倍晋三
は父や父方の祖父を語らない。何ゆえか。本書は、祖父寛、父晋太郎の来し方
を取材や過去の証言から、非常に丁寧にまとめ、二人の生き様がいかに晋三
に影響を及ぼしたのか…という興味深い視点を与えてくれる。
晋三の青年期の来し方は、祖父や父のそれとはあまりに違う。三代目ともなれば
既に多くの権限を有して、苦も無くその大地に立つことが可能なのは、これまで
の歴史が証明している。晋三も同様だ。もっとも、この三代目は、その後の隆盛
と没落を決定づけることもまた歴史が証明している。晋三は、いずれにこの国を、
政治を、安倍家を導くのであろうか。
本書を読む限り、隆盛とは言えまい。結局隆盛へ導く三代目は、己が何者かを
明確に理解し、先人の偉業もありのままに理解し、その上で、あるべき姿を明示
できる人物に他ならない。そして、本書の描く晋三は、残念ながらそのような姿を
垣間見せることはない。
世襲そのものを否定する必要はないものの、代を経て人間的な劣化をしないこと
が世襲される側が成功を修める条件であろう。