「覇権」で読み解けば世界史がわかる の感想

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参照データ

タイトル「覇権」で読み解けば世界史がわかる
発売日販売日未定
製作者神野正史
販売元祥伝社
JANコード9784396615758
カテゴリジャンル別 » 歴史・地理 » 世界史 » 一般

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 著者は1965年生まれで河合塾の世界史講師という人物です。
 ローマ帝国、中華帝国、イスラーム帝国、大英帝国、そしてアメリカ合衆国と、歴史上、覇を唱えた帝国(的国家)を5つ取り上げ、それぞれの興亡史を追いながら、共通して繰り返される「歴史法則」を38個にまとめて紹介する一冊です。

 例えば、著者は歴史法則05として「殷富は富の偏在を促し、富の偏在は秩序を破壊する」ことを指摘しています。事実、それは様々な帝国に当てはまります。
 共和制ローマでは版図が拡大する過程で、侵略先で獲得した莫大な富は市民に均霑されず、貴族が独占していったために経済格差が広がります。結果として共和制は混乱していき、帝政へと移行することになります。
 古代中国に目を向けると、農業生産力が向上した結果、私有制度が起こり、これまた富の偏在が発生します。それまで機能していた君主の「徳」による統治システムは破綻。秦は「法」による統治を採用して混乱を収拾していきます。
 中東ではビザンツ帝国とサーサーン朝の戦争がやまぬため、従来の貿易ルートがアラビア半島を経由するものへと変化します。これがアラブ人の間に富の偏在を生みますが、それを解消するために富の再分配を教えるイスラームが台頭していくことになります。
 イギリスでは産業革命の勃興で貧困層は都市部へと移動し、スラム街の発生、治安の悪化、疫病の流行といった社会混乱をもたらします。
 アメリカでは工業生産力が進み、19世紀末から20世紀初頭にかけて大富豪たちを生みましたが、所得税や反トラスト法などを導入して富の再分配を図る努力が見られます。しかしそれでも1920年代の終わりには世界恐慌を迎えることになります。
 こうしてみると、21世紀初頭の今も世界は各帝国と同じ轍を踏み、富の偏在は放置されています。この書が暗示させる、来るべき大きな混乱を予感せざるをえません。

 後段、著者は民主主義に対する懐疑の念を、辛辣な筆致で記しています。

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