ロマン派の音楽家たち: 恋と友情と革命の青春譜 (ちくま新書1252) の感想

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タイトルロマン派の音楽家たち: 恋と友情と革命の青春譜 (ちくま新書1252)
発売日販売日未定
製作者中川 右介
販売元筑摩書房
JANコード9784480069597
カテゴリエンターテイメント » 音楽 » 音楽理論・音楽論 » クラシック音楽

購入者の感想

1810年前後に生まれた5人の「ロマン派作曲家」たちの、1829年から1841年までの系譜と交流を描いた一冊です。

全員が「ベートーヴェン・チルドレン」であるという位置づけはなるほどと思いました。そして、通読して感じるのは、この時代の若者たちはヨーロッパ大陸を縦横無尽に移動していたのだなぁということ。

もちろん、もっと昔にはダウランドが欧州を遍歴していますし、ヘンデルやモーツァルトだって移動していますが、この本での「5人組」はもっと頻繁に移動していると感じました。これは当時に大きな戦争がなかったことや、主に馬車の交通手段が確立していたことに因るのでしょうけど、このように人々が移動するということは、他の国での出来事が伝わりやすいということでもあります。

そんな世界の中で特徴的なのは女性の進出です。本書では特にジョルジュ・サンドとクララ・シューマンにスポットライトが当たっています。したがって「男女七人音楽物語」でもあるわけですね(笑)。

そして読み終わって思うのは、やはりこれは勝者の歴史であるということです。同じようにヨーロッパを渡り歩き、多くの楽曲を世に送り出していたのに、「音楽史」に名前が残らなかった「敗者たち」が数多くいたはずです。ショパンとタールベルクの差というのは、もしかするとリストやシューマンと仲が良かったか否かの違いでしかないのかもしれません。そんな偶然が必然になっていく軌跡が本書で味わうことができると思います。

 メンデルスゾーン、ショパン、リスト、シューマン、ワーグナーなどロマン派の音楽家たちの交流を中心に、19世紀の音楽の発展を紐解く作品。自分が無知だけなのかもしれないけど、彼らが全員1810年前後の生まれだったとは。ハイドン、モーツァルト、ベートーベン、シューベルトなど、それまでの作曲家の社会的地位は低く、父子直伝の教育で訓練されたのも、誰もなろうとは思わない職業だったという指摘は目から鱗。そういえば、モーツァルトの葬儀も映画『アマデウス』まではいかないまでも質素に行われただけだった。

 それを劇的に上昇させたベートーヴェンで、彼が音楽家を社会から尊敬される存在にした、と。その流れに乗って一般家庭の子弟からも音楽家が出てきた、というあたりの背景説明は、ここまでクリアカットに書かれると新鮮。

 天才ピアノ少年リストは貴族から奨学金を得てハプスブルグのハンガリー領からウィーンに出てきて師事したのがベートーヴェンの弟子ツェルニーだったとは…。子どもの頃、いやいややらされていたピアノの「ツェルニー」が個人的な音楽史の中でやっと位置づけられました。

 1828年までのメンデルスゾーン(19歳~)ショパン(18歳~)シューマン(同)リスト(17歳)作品など、年代ごとに作品が載っていて、こんなに若書きだったのか、と驚く。ショパンがポロネーズ8番をそんなに若い時に書いてるとは…。ショパンはエチュード1-12番を19歳から書き始めているのにも驚く。音楽家は神童が多いから、若書きでも関係ないんだな。

 しかし、メンデルスゾーンもショパンもあっけなく死んでしまうし、シューマンは自殺未遂のあと精神病院で死ぬ。いまのリサイタルの原型をつくったのはクララ・シューマンとリストだが、シューマンとクララの結婚生活はたった17年だったというのにも驚く。

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