こちらあみ子 (ちくま文庫) の感想

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タイトルこちらあみ子 (ちくま文庫)
発売日2017-07-07
製作者今村夏子
販売元筑摩書房
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購入者の感想

あみ子の強烈なキャラや登場人物、背景、話の展開が全て面白く、読み始めてすぐ話の中に引き込まれました。
あみ子の初恋が粉々に砕け散った場面では悲しさよりも切なく、やりきれない気持ちにもなりました。
3作の短編集でどの話もインパクトが強く、心に住み着く本です。

読了時、呆然とさせられる作品、読了後もなお登場人物達の声が、映像が、消えることなく胸を締めつけてくる作品を、久しぶりに読みました。

デビュー作にして、代表作。デビュー作にして、文芸賞受賞。という肩書きや世評といった物差しを抜きにしても、この作品は、それまでのどの作品にも似ていないという点において、傑出していると思います。

優しく暖かみのある語り口、読みやすく簡潔な文体で、突きつけられる容赦なく残酷な世界。子供の視点で描かれていますが、読者の目に映るのは、あみ子が見ている世界だけではありません。読者を、いつの間にか傍観者から、そこに引きずり込む筆力には、圧倒されました。まるで、鼻先に突きつけられた様に、色彩が、匂いが、音が、押し寄せてくるのです。ただ、言葉の力だけで。むしろ、言葉だからこそ、言葉による表現だからこそ、これほどまでに、心を揺さぶる事が出来たのではないかと思えるほどに。
その手法には、賛否両論あるとは思います。それほど、この作者の描く世界は残酷です。あたかも背後から殴られたような気持ちになってしまう人もいるかもしれません。
しかし、それがたとえ不快感やざわざわとした違和感であったとしても、言葉の力だけで、読者をその世界に誘い込み、心に触れてくる。これは、素直に凄い事だと思います。
今村夏子さんだけが描ける世界だと思います。
時代を越えて、読み継がれる傑作だと思います。

『回想の太宰治』のなかで、美知子夫人は、売れない新人時代の太宰について「少数でも、次回作を待ちわびる熱烈な読者がいた」と書いています。太宰はその読者達の為に作品を書いたそうです。芥川賞が欲しくて欲しくて、川端康成に「刺す」とまで書いた太宰。「芸術は、権力を得ると同時に死滅する」と自らを路傍の辻音楽師にたとえた太宰。どちらも、太宰治ですが、個人的には、後者の境遇と信念と読者への心づくしが、数々の傑作を生み出す原動力になったのではないかと思います(あくまで私見です)。

この作品を越える作品を、いつか読める日が来ると信じて、今後も今村夏子さんを、応援します。

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