漱石の思い出 (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトル漱石の思い出 (文春文庫)
発売日販売日未定
製作者夏目 鏡子
販売元文藝春秋
JANコード9784167208028
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

自分は漱石の周辺本(漱石自身が書いたもの以外の漱石本)をかなりの量バサバサと読んできたが、最近この本を読み返してみて思ったことは、おそらく漱石周辺本のなかではやっぱりこの本がいちばん面白いということである。(ちなみに虚子の書いた回想子規+漱石(これはちょっと短いが)もかなりおもしろい。) 

たしかに研究者や弟子が書いた研究書も面白い。しかしそういう研究書は漱石研究の結果として発表するわけで、研究の成果としてのロジカルで統一感のある漱石のイメージを作り出すために現実の漱石からは離れてしまうという結果になる運命からはどうしても逃れられない。そういう本はたいがい書いているひとのエゴやら主張やら希望によって漱石を型にはめ、美化し、磨き上げて立派な銅像にしてしまっているのである。それらの本にくらべると、この本は、奥さんの思い出したことを単に手当たりしだいに支離滅裂に記述しているので、まとまりもへったくれもないかわりに、不思議な現実感が充満している。漱石の日常の空気感みたいなものがそのまま正直に伝わってくる。また漱石のネガティブな一面が正直に描き出されているので、そういった意味でも現実の漱石に近づけた気持ちになることができるのもうれしい。

この本を手にするのは、どちらにしても自分のように当然かなり漱石に興味を持っている人だと思うが、漱石自身の書いたもの以外でさらに漱石に近づきたいと思うなら、まずこの本をおすすめしたい。漱石ファンにとってはちょっと意外な内容かもしれないが、そういう点でも面白いと思う。

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