「忙しい」を捨てる 時間にとらわれない生き方 (角川新書) の感想

「時間にとらわれない生き方」というのがサブタイトルであるが、本書のタイトルとサブタイトルの読み方は、忙しい人の為に、どうすれば時間を有効に使えば良いか、という方法論を説いているのではなく、そもそも時間という概念自体が人工的に作ったものであるから、時間に縛られるような生き方、考え方を捨てればよい、という主旨である。従い、本書に求めるものが前者である場合には期待外れと感じることもあるのではないかと思われる。

「時間の概念」が消えたらどうなるのか、ということは一般人には想像し難いが、筆者は自分の寿命が残り5分だったらどうなるか、ということを例に挙げ、その状態が色々なものから解放され、心がハッピーな状態になり得、逆に1万年生きることの方が不幸ではないかと説く。
全てのことが瞬間瞬間で変化し、生まれ変わっているという考え方は、物事に執着せず、煩悩も消滅し、時間という「刑務所」もなくなり、時間に追われ「忙しい」という概念からも解放されるというのがタイトルの持つ意味のようである。

スティーブ・ジョブスは、若い頃出会った「毎日、これが人生最後の日と思って生きてみなさい。そうすればいつかそれが正しいとわかる日がくるだろう。」という言葉から、「もし今日が自分の人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことを私は本当にやりたいことだろうか？」と問い続け、ほとんど全ての物事は全て吹き飛んでいくようなものであり、最後に残されるものが本当に大事なことだと語っている。
本書はそんなことも思い出させてくれる一冊である。